ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第19話 1978年岡山臨港 山陽路の非電化私鉄早回り(その3)

片上の次に向かったのは岡山臨港鉄道です。

岡山臨港は国鉄宇野線大元駅から出ていました。大元駅岡山駅の隣駅ですが、当時の宇野線は本数が少なく、他に交通手段もなく、かと言って歩くにはちょっと距離があり、とにかく不便なところでした。よって、この日もマニュアル通りに宇野線で大元へ・・・。

実は岡山臨港には、この日が2回目の訪問でした。とは言っても、1回目は1976年8月の別府鉄道訪問の帰りに、大元駅に寄り道して、雨の降るなかキハ5002をチラッと見ただけで、とても訪問とは言い難い状況でした。

 

1.1976年キハ5002との対面 (大元:1976年8月)

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キハ5002(注1)は元江若の車両で、もしかすると江若時代に乗ったかも知れない車両です。そして独特の流線形で、私がぜひ見たかった車両です。その日はキハ5002がまだ健在であることを確認できました。いつかはしっかり調査しようと、それ以来時期をうかがっていましたが、いよいよその時が来ました。

(注1)キハ5002の車歴:岡山臨港キハ5002←江若キニ13:1937年日本車輌

 

2.炭鉱鉄道からやって来たキハ1003 (南岡山:1978年8月)

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この日、大元駅で私を待っていたのはキハ5002ではなく、キハ1003でした。この車両も機械式で当時は予備車的な存在だったので、これに乗れたのはラッキーでした。

3.キハ1003サイドビュー (南岡山:1978年8月)

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キハ1003(注2)は宇都宮車輌が常磐炭鉱の従業員輸送用に製造した車両です。国鉄のキハ40000形を模した形態ですが、車体長は12mで路面電車並みに小さく、張り上げ屋根が特徴です。この車両は廃止間際に和歌山の紀州鉄道に売却され、その後かなり改造を受けたものの2000年まで存在し、現在も鉄道車両の保存団体にて保管されているようです。

(注2)キハ1003の車歴:岡山臨港キハ1003←常磐炭鉱キハ21:1952年宇都宮車輌製

 

4.岡山に潜む希少な気動車たち (南岡山:1978年8月)

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まさか岡山でこんな車両たちに出会えるとは思ってもいませんでした。右のキハ5002は元江若鉄道、左の3001は元中国鉄道の買収気動車です。

 

5.元江若の生き残りキハ5002 (南岡山:1978年8月)

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これぞ江若の生き残り!!。インスタントカメラで撮った渾身のワンカットです。!!それにしてもこの独特の流線形、登場時は相当カッコよかったのでしょうが、なんとも昭和の戦前チックな趣を感じさせます。この形態は“びわこ形”と呼ばれ、京阪京津線で活躍した“びわこ号”こと京阪60型電車に端を発するデザインです。

ところで、岡山臨港にはもう1両江若から来た気動車キハ5001がいました。この車両はキハ5002と生まれも育ちも全くいっしょの兄弟車で、1970年の江若廃止時に岡山臨港が購入したものです。本来この2両は形態も全く同じなのですが、キハ5001は江若時代に車体更新が施され、キハ5002とは全く異なる容姿となってしまいました。”なってしまった”と言うより、“整形手術を失敗した”という表現がそのものズバリです。この日、キハ5001にも一目会いたかったのですが、庫内に隠れたまま会うことはできませんでした。よって写真もありません。

キハ5002は車体更新を受けておらず、老朽化のため1980年に水島臨海からキハ7000形が導入された時点で廃車となりましたが、キハ5001は1984年の廃止まで健在でした。 

 

6.買収気動車のキハ3001(南岡山:1978年8月)

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この車両、キハ3001(注3)もかなりの強者です。一見元国鉄キハ41000形気動車のなれの果ての様にも見えますが、かつて中国鉄道(現JR津山線)が発注したオリジナル車両です。中国鉄道は戦時中に国有化され、この車両も買収気動車となりましたが、当時の燃料統制でまともに稼働できず放置状態だったものを中国工業が戦後に整備して、1951年岡山臨港の設立時に新車として導入されました。

(注3)キハ3001の車歴

 (書類上の車歴)岡山臨港キハ3001:1951年中国工業製

 (実際の車歴)岡山臨港キハ3001←国鉄キハニ200←中国鉄道キハニ200:1937年37加藤車輌製