そこは吊掛電車の博物館とでも言いましょうか、半世紀ほど時代が遡ったような場所でした。
1.クハ1266+モハ2253、クハニ1271他 (津軽大沢:1987年8月)
今回の弘南鉄道訪問は、ほんの寄り道程度のつもりでしたが、あまりにもたくさんの強烈な車両が多く、初回訪問でもあったため、とにかく全容を把握するため車両撮影に専念しました。しかし狭い車庫内に留置された車両の多くは撮影が困難で、列車検査の車両入換や入出庫のタイミングを狙うしかありません。
2.クハニ1271 (津軽大沢:1987年8月)
偶然タイミング良く入庫してきたクハニ1271が良い場所に留置されました。天気がイマイチですが贅沢は言ってられません。「快速」のサボが古老に華を添えます。
このクハニ1271(注1)はなんとしても撮影したかった車両です。この車両も強者で数奇な車歴の買収国電です。生い立ちは伊那電鉄の半鋼製荷物合造客車サハニフ400形で、国鉄買収後は仙山線に移り、1958年に同形車2両が弘南線にやって来ました。弘南線ではこの客車をHL制御の片運制御車に改造し、モハ2250形と編成を組んで使用しましたが、東急からモハ3400形が入線すると、制御方式をCS系に変更して、以来モハ3400形とコンビを組み、1977年に大鰐線に転属となりました。
(注1)クハニ1271の車歴
・弘南クハニ1271←国鉄サハニ7901←伊那サハニフ404:1929年日本車輌製
3.クハ1267+モハ2253 (津軽大沢:1987年8月)
クハ1266形(注2)は元西武鉄道クハ1150形です。深い屋根が特徴のいわゆる川造タイプの全鋼製車両です。1964年に2両が西武から弘南線に移籍し、1974年に大鰐線に転籍してきましたが西武時代に車体更新を受けておりオリジナルとは異なり、リベットなしのスッキリした車体です。この同型車がお隣の津軽鉄道にも客車(ナハフ1200形)として、3両存在していました。
(注2)クハ1266形の車歴
・弘南クハ1266,1267←西武クハ1160,1159←西武モハ162,161←西武モハ112,111←西武モハ561,560:1928年川崎車輌製
4.モハ1120+クハ2251 (津軽大沢:1987年8月)
元富士身延の買収国電であるクハ2251と組んでいたのが元旧国のモハ1120です。この車両の車歴は第130話で愚痴った通り、ぐちゃぐちゃでわけが判りませんが、省電デハ73200形を前身とする元国鉄モハ30形であることは間違いありません。当初は半鋼製でありながらダブルルーフの形態をしていましたが、国鉄時代に車体更新を受け食パン電車になってしまい、多くが各地で活躍しましたが、最後は弘南大鰐線に残るのみとなってしまいました。
5.モハ1120+クハ2251 (大鰐:1987年8月)
私はこの電車を見ていると、かつての国鉄可部線の17m車時代を思い出しますが、どういうわけか国鉄車両に興味がなかったので、広島に住んでいたのに可部線旧国の写真が全くありません。
6.モハ1120車内 (津軽大沢:1987年8月)
モハ1120の車内は懐かしい旧国そのもので、車端にスタンションポールが残っていました。
7.クハ1610+モハ1121 (石川~津軽大沢:1987年8月)
元旧国同士の編成です。かつて首都圏で一世を風靡したモハ30形の残党は、みちのくの地で余生を送っていましたが、間もなく終焉が近づいてきました。