ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第149話 1985年上毛 上州の黄色い電車(その2)

今回は1985年4月に訪問した上毛電鉄の話題です。

前回の訪問からちょうど1年後となりますが、この時は蒲原鉄道村松~加茂間廃止の撮影旅行の帰りに、寄り道したものです。

前回からまだ1年しかたっていないので、在籍車両の陣容も全く変わっていませんでした。唯一の変化は私のカメラが一眼レフになったことです。よって、写真の質がかなり改善されました。

 

1.デハ101 (大胡:1985年4月)

f:id:kk-kiyo:20190331221533j:plain 黄色い電車で生き残ったデハ101(注1)は、相変わらずのしかめっ面で出迎えてくれました。

デハ100形は上毛電鉄が開業時に新製した16m級の非貫通両運車で、4両在籍しました。新製時は3ドア車でしたが、1956年にドア配置を変更した2ドア化され、中央前橋寄りの妻面を貫通化しました。1985年当時残っていたデハ101,104は貨物牽引用でしたが、実際はデハ101の方のみ本務機として、歯車比が変更されていました。車体色はもともとは、もっと黄色っぽかった様に思いましたが、やまぶき色に変更されたそうです。

その後、貨物輸送がなくなりデハ100形は失業してしまいましたが、古い電車であるがゆえに、希少価値が認められ、茶色に塗り替えてデハ101のみ現在も動態保存されています。

 (注1)デハ100形の車歴:上毛デハ101,104:1928年川崎車輌

 

2.クハ34+デハ234 (大胡:1985年4月)

f:id:kk-kiyo:20190331221618j:plain

クハ30形+デハ230形は西武鉄道から転籍してきた車両です。

クハ30形とデハ230形は、西武時代は全く別々に導入された車両でした。形態やサイズも全く異なる車両だったわけですが、晩年は西武が行った旧型車の整理で、一部でコンビを組む機会が生じました。そして、1977年~1980年にかけて廃車となった元西武クモハ351形、クハ1411形は2連化されて8編成が上毛電鉄に移籍しました。

デハ230形(注1)は元西武クモハ351形ですが、もともとは西武が戦後初めて新製した初代501系の先頭車です。湘南顔でノーシル・ノーヘッダーの車体となり、半鋼製でしたが近代化の先駆けとなりました。なお、中間車が完全新製で20m車だったのに対し、先頭車は国鉄から払い下げを受けた元院電を前身とする木造旧型国電の鋼体化名義(台枠流用)だったので17m車で竣工しました。その後501系は先頭車も新製した20m車に置き換えられ、501系から外された17m先頭車は、戦災復旧車や木造車を鋼体化した車両と編成を組み、晩年はクモハ351形を名乗り、廃車後は上毛電鉄大井川鉄道に放出されました。

クハ30形(注2)は元西武クハ1411形です。この車両も新製車に混ざって旧型国電や古い西武の木造車を鋼体化したものが含まれていましたが、初代500形とほぼ同じ時期に製造されたにもかかわらず、旧来の設計で製造され旧態然とした20m級の切妻電車となりました。

(注1)デハ230形の車歴

・上毛デハ231←西武クモハ358←西武クモハ418←西武モハ508Ⅰ:1955年西武所沢車輌製

・上毛デハ232←西武クモハ359←西武クモハ419←西武モハ509Ⅰ:1955年西武所沢車輌製

・上毛デハ233←西武クモハ360←西武クモハ420←西武モハ520Ⅰ:1955年西武所沢車輌製

・上毛デハ234←西武クモハ367←西武クモハ427←西武モハ517Ⅰ:1956年西武所沢車輌製

・上毛デハ235←西武クモハ370←西武クモハ430←西武モハ520Ⅰ:1956年西武所沢車輌製

・上毛デハ236←西武クモハ357←西武クモハ417←西武モハ507Ⅰ:1955年西武所沢車輌製

・上毛デハ237←西武クモハ364←西武クモハ424←西武モハ514Ⅰ:1956年西武所沢車輌製

・上毛デハ238←西武クモハ368←西武クモハ428←西武モハ518Ⅰ:1956年西武所沢車輌製

 (注2)クハ30形の車歴

・上毛クハ31←西武クハ1439Ⅲ←西武クハ1459←西武クハ1441Ⅰ←西武クハ1411Ⅱ:1954年西武所沢車輌製(元国鉄サハ19040を種車とする)

・上毛クハ32←西武クハ1438Ⅲ←西武クハ1458←西武クハ1440Ⅰ←西武クハ1410:1954年西武所沢車輌製(元国鉄サハ2008を種車とする)

・上毛クハ33←西武クハ1447←西武クハ1467←西武クハ1437Ⅱ:1957年西武所沢車輌製

・上毛クハ34←西武クハ1428:1955年西武所沢車輌製

・上毛クハ35←西武クハ1429:1955年西武所沢車輌製

・上毛クハ36←西武クハ1448←西武クハ1468←西武クハ1438Ⅱ:1957年西武所沢車輌製

・上毛クハ37←西武クハ1423:1955年西武所沢車輌製

・上毛クハ38←西武クハ1427:1955年西武所沢車輌製

しかしながら、西武クモハ351形、クハ1411形は元旧型国電の戦災復旧やら木造車の鋼体化が絡み、全容は非常に複雑で、東急3400系などと同様に車歴はわけがわかりません。

3.クハ36+デハ236 (大胡:1985年4月)

f:id:kk-kiyo:20190331221645j:plain

クハ30形+デハ230形の下記の4編成は西武時代からコンビを組んでいましたが、その他の編成は、上毛電鉄移籍時に新たにコンビを組んだものです。

※西武時代からコンビだった編成

上毛クハ34+デハ234←西武クハ1428+クモハ367

上毛クハ35+デハ235←西武クハ1429+クモハ370

上毛クハ37+デハ237←西武クハ1423+クモハ364

上毛クハ38+デハ238←西武クハ1427+クモハ368

 

4.クハ30形+デハ230形 (粕川~膳:1985年4月)

f:id:kk-kiyo:20190331221706j:plain

 この日は沿線でも若干撮影をしました。しかしどの列車も同じような元西武電車だったので適当にやり過ごしてしまいました。

 

5.クハ30形+デハ230形 (粕川~膳:1985年4月)

f:id:kk-kiyo:20190331221724j:plain

赤城山をバックに桑畑を行く元西武電車です。

 陽の向きの都合でデハ側の写真が1枚もありませんが、この写真は側面ではありますが唯一デハの湘南顔が写っています。また、クハとデハの車体長の違いも認識できます。

 

6.クハ30形+デハ230形 (粕川~膳:1985年4月)

f:id:kk-kiyo:20190331221746j:plain

 この辺りはのどかな田園地帯で、走行写真を撮るには最適な場所ですが、車両に興味が持てないと気合も入りません。

 

7.クハ501廃車体 (大胡:1985年4月)

f:id:kk-kiyo:20190331221809j:plain

 大胡の車庫に鎮座していたダルマは元青梅電鉄の買収国電を前身とするモハ503の成れの果てでした。

 

上毛電鉄はお隣の上信電鉄に比べてその存在が非常に地味です。そして雑多な黄色い電車が淘汰され、西武上毛線と化した以降は足が向かず、その後の訪問もありませんでした。