ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第156話 1987年関東(常総) 気動車三昧(その4)

今回は、常総線の長老というか、関東流の洗礼をモロに浴びた元流線形グループです。

 しかし、この車両があの優美な卵型流線形の元国鉄キハ42000系だったとは、この姿からは想像できません。

 

1.キハ612+キハ611 (水海道:1987年1月)

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 私が勝手に定義する“関東流の洗礼”とは、関東鉄道が各地から買い集めた中古気動車にほぼ無差別的に実施した強烈な通勤車化改造を意味します。

具体的には、貫通化、ドア増設、中央ドアの両引き化、ステップの撤去、ロングシート化、デッキの撤去などですが、最悪だったのが徹底した前頭部形状の切妻(食パン)化でした。その犠牲?になったのがキハ610形(鹿島鉄道のキハ600形も)でした。

 

2.キハ614 (水海道:1987年1月)

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 キハ610形の車歴については第58話で触れましたが、ほとんどが戦前製の機械式気動車で、こんな古い車両をここまでして再生する徹底ぶりが関東一家の流儀だった様です。ちなみに、キハ611~614が西武所沢車輌、キハ615が大栄車輌で改造されました。

結局キハ610形が5両、キハ600形が2両、そしてキハ704、ついでにかつて鉾田線にいたキハ651の計9両がこの洗礼を浴びました。

※厳密には、キハ704はキハ703の前妻面を移植したので切妻貫通ではありません。また、鉾田線のキハ651は元国鉄42000系ではなく、元東横電鉄の急行用流線形気動車キハ1形(通称イモムシ)が種車でしたが、この車両が洗礼を浴びた後の姿がこれまた絶句でした。

 

3.キハ614 (水海道:1987年1月)

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 ところでキハ610系は、前面は1975年の改造時に新製された新車顔ですが、車体本体は元のままなので、側面を見ると年齢はごまかせません。しかも車内の内張りは木製でした。そして足回りも華奢な菱枠台車でした。それでも当時の新車であるキハ0形や他の気動車たちとは、何ら遜色もなく平然と走っていました。もっとも、新車のキハ0形とて、車体は新製ですが臓物は元国鉄キハ20系の再生品で、エンジンも同系列のDMH17なので性能的にも大差はありません。

 

4.キハ614+キハ613 (水海道:1987年1月)

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 水海道駅に停車中のキハ610形2連です。床下の排気管から煙が上がっていますが、気動車ならではの光景です。

 

5.給油入庫のキハ613+キハ614 (水海道:1987年1月)

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 気動車は経費がかかると言われますが、その理由のひとつは給油です。DMH17ではリッター1kmも走れません。特に通勤路線の常総線では駅に止まる回数が多く、発車のたびに燃料を喰います。国鉄の長距離気動車などは、床下に大きな燃料タンクを抱えていますが、満タンにすると重量が重くなり燃費も悪化します。常総線では燃費を重視して給油回数を多くしてたようで、概ね水海道から取手を1往復すると給油するようでした。結構頻繁に給油を行っていましたが、このタイミングが絶好の撮影チャンスでした。

 

6.キハ614+キハ613 (水海道:1987年1月)

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 1987年時点、キハ610形は1985年に廃車されたキハ615を除く4両が健在でした。キハ610形は片運車でもともと固定された編成を組まず、適宜運用されていましたが、残った4両はちょうど、下館寄りに運転台がある奇数車と取手寄りに運転台がある偶数車がそれぞれ2両だったので、キハ610形同士の2連が2本組め、晩年は2連で活躍する機会が多かったです。

 

7.キハ611 (水海道:1987年3月)

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 キハ610形の写真は、偶数車に比べて奇数車が極端に少ないです。これはキハ610形に限らず、下館寄りに運転台がある車両の写真に対して共通です。理由は、陽の向きです。水海道機関区は線形の都合で、下館寄りに運転台がある車両は北を向いているので、終日陽が当たりません。天気の良い日は終日逆光です。よって陽の当たる綺麗な写真が撮れません。しかし、何とか形式写真を撮るために狙ったのが曇りの日です。私は基本的に天気の悪い日には撮影はしないのですが、常総線ではそんなこを言ってられません。常総線の写真に曇りの日が多いのはこのためでした。