ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第501話 番外編:NDC考察(その2)

第500話では、NDC模索期の概要をメーカーパンフレットで辿ってみましたが、今回から実車の変遷を各車のカタログで辿ってみたいと思います。

まずは、NDCの基礎となった三陸鉄道の36形です。この車両は、それまでの国鉄制式気動車の呪縛から解き放された記念すべき民間向け気動車です。最近では、東日本大震災復興のシンボル的存在となり、NHKの連続ドラマにも登場したことから、かなりの知名度を得た車両です。

さて、三陸36形は一見、NDCではないかと思われがちですが、そうではなく、NDCのお手本となった車両で、NDCではありません。製造は三陸鉄道の開業に合わせた1983~84年製です。新潟鐵工の基本デザインですが、製造は北リアス線用が新潟鐵工、南リアス線富士重工に分担され、増備車を含めて19両が製造されました。

 

1.三陸鉄道36形車両カタログ抜粋

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 三陸36形の特徴は、何と言っても国鉄離れした外観デザインですが、基本仕様はその直近に製造された国鉄キハ37形がベースです。キハ37形知名度が低く、5両しか製造されなかったレアな車両ですが、キハ40系列の反省を踏まえて登場した試作的要素の高いローカル線向け気動車で、特に国鉄が初めて直噴式エンジンに手を出した車両でした。三陸36形では、この直噴式エンジンを早速採用したわけですが、当時の新潟鐵工のエンジン部門にしてみれば、すでに当たり前となっていた船舶用直噴式エンジンであり、決して新しいものではありませんでした。それまでは、国鉄制式気動車の呪縛で、仕方なく製造し続けていたDMH17系列の旧態エンジンから、ようやく解放されるきっかけとなりました。いわば、三陸36形は直噴式エンジンの量産採用を世に知らしめた新系列気動車の先駆け的存在であり、NDCの礎とも言えます。

 

2.三陸鉄道36形車両カタログ抜粋

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 しかし、三陸36形はそんな画期的な車両ではありますが、エンジン以外は従来の気動車から脱却できていませんでした。カタログには車体の軽量化と書かれていますが、実態は車両の小型化による軽量であり、まだまだ根本的な軽量化には踏み込めていませんし、台車はいつものDT22モドキ。非冷房で内装も国鉄の亜流。NDCの特徴であるダウンサイジングには程遠い車両でした。

 

3.三陸鉄道36形車両カタログ抜粋

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 このカタログの室内写真は、NDCのPRパンフレットにも使用されていましたが、実際に量産化されたNDCでは腰掛は国鉄タイプではなく、構体の見直しから窓が大型化されました。

 

4.三陸鉄道36形車両カタログ抜粋

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三陸36形は従来の国鉄気動車から、ローカル線向けにやや小ぶりとなり18m車になりました。車体が小さくなった分軽くなり、自重は31t程となりました。230PSのエンジンなので従来の気動車より走行性能が向上していますが、その後エンジンはどんどん出力アップされて、現在ではNDCでも300PS以上が当たり前になっています。

 

5.気動車新時代の幕開けは、三陸だった。

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さて、三陸36形は、その後の新系列気動車量産の起爆剤となりました。そして三陸鉄道自体が第三セクター化路線の第1号でもあったことから、これをモデルケースとして、三陸36形の様な新車を導入する第三セクター路線が続々と登場します。