ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第503話 番外編:NDC考察(その4)

今回は、NDC第2作以降の実車の話題です。

由利高原鉄道YR-1000形で現実化されたNDCですが、まだ確定版とは言えませんでした。続く第2作目も迷走状態ですが、ようやく馴染みがある形態の登場です。

 

1.南阿蘇鉄道MT-2000形カタログの抜粋

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NDC第2弾は、はるか九州に飛んで、南阿蘇鉄道MT-2000形として3両が納入されました。この南阿蘇鉄道は、元国鉄高森線を1986年に第三セクター化して誕生した路線です。 2016年に発生した熊本地震に被災し甚大な被害を受けて、現在は全線の60%に当たる立野~中松間が不通となっており、令和5年度の全線復旧に向けて邁進中です。

 

2.南阿蘇鉄道MT-2000形カタログの抜粋

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このMT-2000形は、ようやく新潟鐵工NDCのPRパンフレットに記載された形式図の外観に近い前面1枚窓の非貫通形態になりましたが、車体長が16m級にやや大型化され、なぜか台車はDT22タイプ、ドアはバス用の折り戸となり、さすがに冷房付きですが、自重は約25.5tにまで軽量化され、一見、同時期に製造された富士重工のボギー式LE-Carの様なスタイルとなりました。いよいよ新潟鐵工もバス用部品を多様化して低廉化を進めることになりますが、逆に富士重工は、2軸のレールバスでは輸送力が足りず、ボギー車に移行する実態となり、いつしかレールバスであったLE-Carは、大型化されてLE-DCとなり、NDCとLE-DCの差異がなくなって行きます。

 そして、その後はこのタイプのNDCが基本となり、各地に増えて行き、1987年には会津鉄道錦川鉄道若桜鉄道にNDCが導入されました。ところが、ここでまた地域性によるバリエーションが現れました。

 

3.錦川鉄道NT-2101

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錦川鉄道は、山口県の元国鉄岩日線を第三セクター化して誕生した路線で、開業時に5両のNDCを導入しました。実はこのNDCの元請けは地元の日立製作所でした。しかし、新幹線車両の製造で忙しい日立製作所は、ローカル線の気動車など造っている場合ではなかったのか、餅は餅屋の新潟鐵工に話しを振りました。そして導入されたのは、南阿蘇鉄道MT-2000形ベースの車両でしたが、台車は2軸駆動の空気ばね台車NP-120となり、これで16m級NDCの標準化が図られました。

しかし、同時期に製造された会津鉄道向けのNDCは、16m級でありながら、地域性を重視した設計となりました。それは雪と勾配に強い車両です。由利高原鉄道YR-1000形導入時の要望に似た話ですが、さすがに由利高原鉄道と同じ車両とはならず、南阿蘇鉄道MT-2000形の構体を活かした新たなバージョンとなりました。台車は錦川鉄道NT-2000形と同じ2軸駆動の空気ばね台車NP-120ですが、この台車は会津鉄道用に新規設計されたもので、これをNDCの標準台車として錦川鉄道NT-2000形にも採用したのが実態です。

 

4.会津鉄道AT-100,150,200形カタログの抜粋

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 会津鉄道は、元国鉄会津線第三セクター化して誕生した路線です。路線も60km近くあり比較的長距離路線で、終点の会津高原では新規開業した野岩鉄道とも接続されることから、開業にあわせて3種類のNDCが12両導入されました。3種類と言っても、基本的な構成は標準化されており、AT-100とAT-150の違いはトイレの有無だけ、AT-200は前面非貫通の片運車でイベント車兼用です。

 

5.会津鉄道AT-100,150,200形カタログの抜粋

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会津鉄道向けのNDCにより、寒冷地用NDCのバージョンが確立されたものと思われます。これをベースに、JR北海道キハ130や池北高原鉄道CR-70,75形に展開されます。

そして、NDCの新たなバージョンとして2連の片運車であるAT-200形が登場しました。この車両の登場は赤字転換された第3セクターであっても、優等列車の需要があった証しでした。しかし、優等列車用と言ってもAT-200形は低廉化車両であり、安っぽさは否めません。やがて、三セク向けの優等列車用に多少ゴージャスな車両がNDCのラインナップに登場しますが、AT-200形はその黎明期の位置づけです。

ところで、今から30数年前にNDCの設計関係者から、興味深い図面を見せてもらった記憶があります。それは三陸鉄道36形と思われる車両の片運車2連の形式図で、計画に終わった検討図の様でしたが、構成的には会津鉄道AT-200形の素案になったものと思われます。今となっては片運の三陸鉄道36形などあり得ない車両ですが、模型なら幻の車両として再現できそうです。

 

 そして、若桜鉄道ですが、ここで18m級の大型NDCが初登場します。

 

6.若桜鉄道WT-2501

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若桜鉄道は、鳥取県の元国鉄若桜線を1987年10月に第三セクター化した路線で、18m級のNDCが4両導入されました。やはり、ローカル線と言えどもある程度の輸送力が必要と言うことです。

若桜鉄道WT-2500形の製造を機に、NDCは大型車に戻っていくように思えました。そしてこの前面デザインは現在の気動車の代表的な顔になりましたが、国鉄の三島対策で製造された気動車の顔です。この顔を第三セクター向けに採用したNDCは若桜鉄道WT-2500形が第一号でした。

 

7.若桜鉄道WT-2501の車内

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WT-2501の車内はセミクロスシートです。18m車ともなれば座席数も多く、一般の鉄道車両と変わりませんが、天井の換気ファンとカモイの冷房ダクトがNDCを印象付けます。

 

8.若桜鉄道WT-2500形

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 これ以降、NDCは車両長18m級と16m級が主流となります。白装束のNDCたちは全国に旅立ち、華やかな時期を迎えます。