ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第507話 番外編:NDC考察(その8)

さて、NDCのアレンジバージョンで行き着いたのが優等列車用でした。

そもそもローカル線なのになぜ優等列車が必要なのか?仮にJRが路線の運行を引き継いでいたとして、優等列車など走らせたのだろうか?しかしそこには、第三セクターを立ち上げた地元の熱意がありました。

 

1.秋田内陸縦貫鉄道NT-8900形

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 赤字転換路線と言えども、路線長が100kmにも及ぶ長大路線が存在しました。地域活性化や観光化の促進のためにも優等列車が望まれました。そして、人を寄せるためにはいつもの安っぽいNDCではいけません。しかし、お金はかけられません。そんな思いが込められて登場したのが、優等列車用NDCでした。その代表となったのが秋田内陸縦貫鉄道の急行用兼イベント用のNT-8900形でした。

 

2.秋田内陸縦貫鉄道NT-8900形カタログの抜粋

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 この車両は、NDCの優等列車バージョンとしては2例目となります。前例は会津鉄道AT-200形(第503話参照)ですが、ずいぶん変身しました。

いきなり大型曲面ガラスの流線形となり、側窓も高さが1mを越える大型固定窓。外観はNDCとは思えないゴージャスぽい雰囲気が漂っていますが、中身も!!

 

3.秋田内陸縦貫鉄道NT-8900形カタログの抜粋

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この車両のコンセプトが、上記の車両カタログに書かれています。それによると、誰が調べたのか、この外観は、「特にヤングレディに人気がある」ようですが、どこのヤングレディなのか?。恐らく鷹ノ巣あたりのヤングレディだと思いますが・・・そして車販コーナー、コーヒーウォーマー、自販機、ビデオ、カラオケデッキ付きの重装備車両です。吉幾三の歌の通り、沿線にはカラオケボックスなどないようですが、この列車に乗ればカラオケボックスがあるのと同然、空調やトイレもあり、コーヒーも飲めておつまみも買えます。ヤングレディ(鷹ノ巣?の)に人気があるとはこのことか!?

 

4.秋田内陸縦貫鉄道NT-8900形カタログの抜粋

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 外観だけなら「ドリフの舞台セット」と言われそうですが、内装も限られた予算のなかで精一杯頑張った様です。カタログには車内の写真が掲載されていますが、車体の中央に鎮座したのは囲炉裏ではなく、ソファーもどきに囲まれたサロンコーナーでした。バブル期にはやっていたハイデッカーのサロンバスのパクリとでも言いましょうか、新宿5丁目あたりの場末のスナックを想像させます。私など転換クロスシートに挟まれた空間は、恐縮してくつろげそうにありません。混んできたら最後に埋まるスペースの様に思いますが、実際はどうなのでしょうか。

 

5.秋田内陸縦貫鉄道NT-8900形カタログの抜粋

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 この車両は、秋田内陸縦貫鉄道の南線、北線が全通した1989年に導入されました。

上図の片運2連が基本編成です。これが2本と、これに検査予備用のサロンコーナーがない貫通型両運車(前面はNT-8800で側面はNT-8900同様)が1両加わり、総勢5両の優等列車の陣容でした。

そして、このタイプの車両が高千穂鉄道にも出現し、続いて、バージョンは異なりますが、南阿蘇鉄道にはこの流線形を採用した両運車が、イベント車として登場します。

 

6.秋田内陸縦貫鉄道NT-8900形カタログの抜粋

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7.秋田内陸縦貫鉄道NT-8900形

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NT-8900形は製造時期が1989年であったことから、それまで採用されて来たNDCの総決算的な車両です。所詮NDCなので、要所に垢抜けない安っぽさが漂う、これもバブル期の副産物でした。しかし、国鉄が見切りを付けた赤字ローカル線にこの様なインパクトのある車両を導入された関係者の熱意には頭が下がります。時代が変わり、ローカル線には厳しい現況ではありますが、この路線の末永い存続と、再びインパクトのある次期車両を期待します。