ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第511話 番外編:NDC考察(その12)

今回は、新潟鐵工製NDCの晩年の車両についてです。

国鉄赤字ローカル線第3セクター化は、ほぼ1980年代に収束しました。そしてその後はJR西日本向けNDCの製造が継続されましたが、1990年代後半になるとそれも収束し、NDCの製造は既設路線の増備車をパラパラ納入する程度の氷河期となりました。

 

1.井原鉄道IRT355形車両カタログ抜粋

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 その様な状況下で唯一まとまった両数だったのが、井原鉄道向けNDCでした。

 井原鉄道は、国鉄未成線第3セクター化して1999年に開業した新規路線です。この路線が現時点では国内最後の非電化新設路線と言えます。

 

2.井原鉄道IRT355形車両カタログ抜粋

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井原鉄道の路線は高規格で、列車はJR伯備線にも乗り入れることから、NDCですが最高速度110km/h対応でエンジン出力も355PSとなりました。またJR西日本向けNDCであるキハ120形の影響なのか、SUS構体の採用となりましたが、車両長は18m級となりました。

 

3.由利高原鉄道YR-2001

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 しかし、この頃のNDCは注文はあっても専ら増備車両ばかりで、1両ポッキリというのがほとんどでした。しかし、初期の車両納入から年数が経っており、同じ車両が製造できない(同じ車載機器や部品が購入できない)場合がほとんどで、ここで1両のために設計し直すのはナンセンスです。よって、この頃のNDCは機種を絞って、どこにも同じような車両が納入され始めました。これによって開業時は個性のあった車両はこの頃の増備車から面白くなくなりました。

たとえば、由利高原鉄道YR-2001は、2000年製造の車両ですが、もう15m級の偏心台車ではなく、18m級の標準タイプです。

 

4.南阿蘇鉄道MT-3010車両カタログ抜粋

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 そして、相変わらず根強い人気のイベント兼用であるレトロ車も、標準タイプに推されて、何がレトロなのかわからない「レトロぽい」車両になった感じです。

 

5.南阿蘇鉄道MT-3010車両カタログ抜粋

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 この南阿蘇鉄道MT-3010がNDC晩年のレトロバージョンです。この車両は1998年製で、17m級となり、このタイプの車両は1999年にも松浦鉄道MR-501として納入されました。

 

6.天竜浜名湖鉄道TH-2100形

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その後、天竜浜名湖鉄道では車両置き換え時期となり、特異な例ですが、従来のLE-CarではなくNDCに車種変更されました。このように車両の置き換えと同時に車種変更(製造メーカーの変更)されるケースが時々ありました。理由は様々で、車両価格、メーカー対応、在来車の不適合、政治的背景・・・・等々。この時天竜浜名湖鉄道に導入されたのはTH-2000形と言う18m級標準タイプのNDCで、NDCとしては初のTICS搭載となりました。新潟鐵工製として2002年2月までに6両(2002年製造の3両はTH-2100形)が納車され、以降、新潟鐵工所新潟トランシスに引き継がれた後も増備が続き、同シリーズの車両は合計15両製造されました。

 

7.若桜鉄道WT-3301

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その他、若桜鉄道WT-3301も新潟鐵工最晩年である2001年製造のNDCでした。これも1両だけの製造でした。若桜鉄道のNDCは、当初から18m級の標準タイプでしたが、1次車から14年も経つと根本的に臓物が変わってしまい、同じ車両が製造できず、WT-3301では当時の標準車ベースとなりましたが、最新の井原鉄道IRT355形の流れなのかSUS構体となりました。

新潟鐵工所は2001年11月に経営破綻しました。なお、倒産したと言っても、会社更生法適用でユーザーや関係機器メーカーに多大な迷惑を掛けながらも事業は継続され、倒産時に製造中だったJR西日本向けキハ187形、キハ125形、天竜浜名湖鉄道TH2000形、大阪市交通局ニュートラム100A系7次車などは製造を続けて納車され、受注残であった岡山電軌9200形LRVなども無事に納車されて、鉄道車両製造事業は新生会社の新潟トランシスに引き継がれました。