ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第635話 1992年小口川:名もない天空の資材運搬軌道

私のトロッコ趣味のバイブルである「知られざるナローたち」に、得体の知れないトラック改造のゲテモノロコの写真が掲載されていました。しかし、場所などの情報は一切非公開だったので、余計に好奇心がくすぐられ、国土地理院の全国の地形図をシラミ潰しに調べまくり、それらしい場所を探り当てました。

それが、富山県立山にほど近い、常願寺川支流の小口川に沿った、名もない「資材運搬軌道」でした。

 ただし、そこがゲテモノロコの軌道なのか、何も確証はなく、そもそも地形図の軌道が存在するのかも不明でした。

 

1.現地概要(引用:国土地理院1/50000地形図「五百石」昭和54年発行)

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上図が探り当てた「資材運搬軌道」です。場所は立山砂防軌道のすぐ近くで、同じ1/50000地形図に描かれていましたが、当時私は広島の高校2年生だったので、こんなところまで調べに行く術もなく、謎のまま年月が過ぎました。 

そして、この謎が解明されたのが、レイルマガジン誌増刊号の「BEST・トロッコ」の記事でした。想定通り、この「資材運搬軌道」が得体の知れないゲテモノロコの走る路線であることが立証されました。しかし、路線名は「水口建設?」となっており、なんか釈然としません。

ともあれ、場所がはっきりしたので、あとは現地調査あるのみですが、その後の展開は非常に早く進み、そのわずか数カ月後の1985年8月に立山砂防軌道を訪問したついでに、現地へ行ってしまいました。その時の様子は第85話でお伝えしましたが、なんともお恥ずかしい結果になってしまったことは周知のとおりです。

そこで、今回の話題は、そのリベンジとなる恐らく最初で最後になるだろう一人行軍です。

 

2.撮影場所詳細(引用:国土地理院1/25000地形図「小見」昭和52年発行)

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一応、2度目のチャレンジなので、ある程度の勝手はわかっていましたが、今回は一人で車もなく、最初から最後まで頼りになるのは自分の足でした。しかし、前日は立山砂防の樺平まで往復歩いたダメージがまだ回復しておらず、足のマメをかばいながら、早朝の富山地鉄有峰口駅に降り立ちました。その時期は夏山シーズンの真っ盛りで、有峰口の駅前は早朝から有峰湖方面に行く登山客で賑わっており、皆さん大きなリュックを背負った登山姿でしたが、私はTシャツ、Gパン、スニーカーにカメラの入ったナップサック1個で、向かう方向も微妙に違い、バス停の長蛇の列をすり抜けて人気のない道を進みました。

そこから黙々と2時間ほど歩き、小口川第2発電所に辿り着きました。そして、上図の①から撮影開始です。ちなみに、上図の丸数字は、以下の写真番号と撮影場所を示します。

 

写真①

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写真①は小口川を挟んで右が第2発電所、左が索道の下端です。有峰口駅からここまで徒歩2時間です。 いい加減疲れましたし足が痛い。しかしこれからが正念場の登山です。索道上端までつづら折りの獣道を標高差200mほど登らなければなりません。

 

写真②

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写真 ②は獣道から第2発電所ヘリポートを眺めたものです。ヘリポートはあるものの、ヘリコプターは輸送費がかかるので滅多に使用しない様です。

 

写真③

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写真③は登山途上です。獣道と索道が交差する地点から下界を除いて見ました。吸い込まれそうな高低差です。荷物の運搬は専らこの索道が使用されていました。もうかなり上がって来ましたがもう一息です。 

 

写真④

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 写真④は索道の上端です。ここまで登るのに30分かかりましたが、前回と違い、まだ朝なので涼しく、体力が温存出来ました。

  さて、ここまでは前回も来たところです。ここから先が未踏の地です。

 

写真⑤

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写真⑤はかつての軌道跡で、トラック道となっていました。前回はこのレールのない廃線を見て一気に脱力し、リタイヤしてしまいましたが、その後の情報で、この先にはまだ現役の軌道が残っているとのことで、今回はここから軌道を求めて進みます。

 

写真⑥

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 トラック道は元々軌道だったので、等高線に沿って平坦ですが、やたらとクネクネしており、しかも道路幅は狭く、ガードレールもありません。脇見運転などしたら、奈落の底行きです。

写真⑥はこの軌道跡のランドマークである高圧線の鉄塔です。

 

写真⑦

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 写真⑦はトラック道から小口川第3発電所を望んだものです。はるか前方の建物がある場所が軌道の終点のはずです。ここからあそこまで歩きます。あと2kmほどでしょうか。