ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第660話 1992年名鉄(岐阜):悩ましい市内電車

1992年のGWは近鉄北勢線養老線を訪問し、帰りは大垣に出ました。そして、岐阜から豊橋までは名鉄を利用するため岐阜で下車しましたが、まだ時間もあるのでたまには岐阜市内線の電車でも見ようと車庫のある市ノ坪へ向かいました。

  これまで岐阜と言えば名鉄の揖斐・谷汲線ばかり出向いていましたが、市内線や美濃町線は古い車両がなかったので全く興味が湧かず、正直どんなところを走っているのかも把握していませんでした。

 

名鉄美濃町線時刻表(平成11年4月1日改正)関方面の抜粋

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まずは徹明町から競輪場まで乗車です。徹明町は美濃方面への市内線の起点でしたが、ホームもない単線の電停でした。ここから発車する電車は普通の路面電車タイプで、日中は市街地の外れである日野橋折返しの運用で、日野橋から先は新岐阜発の新関行に乗り換えとなりました。

ここで謎なのは、上記の時刻表をご覧頂くと、徹明町発着の電車と新岐阜発着の電車が途中の競輪場前~日野橋間を続行運転するダイヤになっていたことです。そもそも、徹明町と新岐阜は500mしか離れておらず、行き先を分けなくても、徹明町の交差点に新岐阜方面への渡り線を追加すれば済む話です。しかも、新岐阜への直通列車は田神~新岐阜間のわずか1駅だけDC1500V区間各務原線に乗り入れるため、わざわざ複電圧車を使用していました。

 

1.モ601 (市ノ坪~競輪場前:1992年5月)

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まあ、名鉄にとって美濃町線は、徹明町よりも新岐阜に直接乗り入れることが重要なステータスだったのかも知れませんが、私の様な「よそ者」にとっては、非常にわかりにくい運行形態で、悩ましい市内電車でした。

 

2.モ603 (競輪場前:1992年5月)

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 モ600形は美濃町線用の複電圧車でした。1970年の新岐阜乗り入れ用に6両が新製されましたが、市内線運用も考慮された結果、なんとも馬面になりました。車体幅約2.3m、車両長15m弱のこの車両は何とクロスシート車です。美濃町線におけるモ510形の後継車でしたが、床下は旧型車の流用機器でギュウギュウ詰め、一見冷房車風に見えますが、屋根上の機器箱は抵抗器です。限界艤装の濃縮電車でした。

 

3.モ604、モ603  (競輪場前:1992年5月)

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 市内線電車の競輪場で下車した私は、車庫がある市ノ坪まで、田神線を1電停戻りました。この田神線は市内線の車庫が新岐阜から市ノ坪へ移転した1966年に出来た入出庫用の非営業路線でしたが、1970年新岐阜~美濃間の直通運転開始により営業線になりました。

写真は、田神線の競輪場前電停です。ここもホームはなく、道路に白線で電停位置が記されているだけですが、列車の交換所になっていました。ちょうど列車の交換風景を撮影できましたが、ご老人が乗車する様子は、安全面、バリアフリー面で考えさせられるものがありました。

 

4.モ880形  (競輪場前:1992年5月)

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 そして、この電車は1980年に導入されたモ880形低床連接車です。この電車は5編成製造されましたが、この当時はまだ非冷房で、高床車のモ600形6両と共通運用されていました。ところでこの電車は現在福井鉄道に居ます。

 

5.モ551、モ558、モ572  (市ノ坪:1992年5月)

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 ここが、市ノ坪にある車庫です。ここには岐阜市内線用と美濃町線用の車両が所属していました。写真には、モ550形とモ570形しか写っていませんが、1992年当時の岐阜市内線車両は、これ以外にもオリジナルのモ590形、元札幌市電A830形だったモ870形が在籍していました。

 

6.モ558 (市ノ坪:1992年5月)

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モ550形は元北陸鉄道金沢市内線モハ2000形です。 金沢市内線が廃止されて、1967年に10両が岐阜へやってきましたが、この他にも元金沢市内線からやってきたモ530形、モ560形は、1988年に岐阜市内線の徹明町~長良北町間が廃止された時点で余剰となり、モ550形を除き廃車されました。

 

7.モ575 (市ノ坪:1992年5月)

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 モ570形は一見都電6000形の様な車両ですが、まさに都電6000形をコピーした車両で、美濃町線用に5両新製されたオリジナル車両です。

 

この日は、このあと豊橋鉄道を訪問するため、岐阜市内線は以上でサラッと流しましたが、帰りは市ノ坪から一旦新岐阜へ戻りました。しかし、乗った電車の車内精算で一悶着が・・・

私は徹明町から競輪場まで乗った市内線料金と同額を払ったのですが、料金不足を指摘されました。実は、市ノ坪~田神間の500mは市内線で、田神~新岐阜の1駅間は鉄道線なので別料金が加算されるとのこと。よって倍料金。やられました!!

この時、競輪場前~日野橋間の続行運転の謎が解けました。例えば市内線区間の日野橋から岐阜方面に乗車すると、徹明町までは市内線均一料金で乗車できますが、新岐阜までは鉄道線料金が加算となり、倍料金となります。よって、ひねくれた解釈をすれば、倍料金を払いたくない人のために続行運転の徹明町行が存在していたのでは・・・。しかし、名鉄にしてみれば、岐阜市内の道路渋滞に影響されず、名古屋方面へ乗り換えが便利な新岐阜直通は倍料金でも当然と言ったところでしょうか?

しかしながら、名鉄岐阜市内線は「よそ者」には何かと悩ましい市内電車でした。