ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第726話 1993年西鉄(北九州):微妙な共存

かつて北九州市には、西鉄北九州線と言う長大な路面電車が存在しました。しかし、1985年から1992年にかけて段階的に路線縮小を行い、1993年当時は黒崎駅前~折尾間の専用軌道区間わずか5.1kmの路線になっていました。専用軌道とは言え、これだけの路線を残す意味があるのか不思議でしたが、この残存区間黒崎駅前~熊西の少し先までは、系列である元気な筑豊電鉄が乗り入れており、「微妙な共存」区間でした。

今回は1993年11月の九州遠征の途中で立ち寄った西鉄北九州線の残存区間の様子です。

 

1.621 (西黒崎:1993年11月)

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 西鉄北九州線はかつて路線長が40kmにも及び、保有車両数も路線短縮前は両運車52両、2連接車21編成、3連接車7編成が在籍する大所帯でした。しかし、1993年時点では、両運車の600形(注1)が9両、2連接車の1000形(注2)が5編成となっており、1000形は筑豊電鉄のラッシュ時の助っ人として在籍していました。

 

2.625 (西黒崎:1993年11月)

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 かつては、様々な両運車がいましたが、最後に残ったのは北九州線で最多50両を誇った600形でした。600形はそれまでの木造ボギー車を淘汰するため、1950年~1953年に製造され、両数が多かったためか新潟鐵工所川崎車輌近畿車輌の3社で製造されました。

 

3.632 (西黒崎:1993年11月)

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 (注1)600形の車歴

西鉄611,619,621,622,625:1952年近畿車輌

西鉄632,635,646,649:1953年近畿車輌

(注2)1000形の車歴

西鉄1018A+B~1020A+B:1955年近畿車輌

西鉄1024A+B,1025A+B:1958年近畿車輌

 

4.646 (西黒崎:1993年11月)

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 600形は車両メーカーの違いや、車両更新改造の経緯から若干スタイルに差異が見られましたが、晩年に残った車両は製造年の新しい近車製に統一されました。

 

5.筑豊2108BA+B (西黒崎:1993年11月)

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 さて、写真の2連接車は見た目西鉄の車両に見えますが。これは筑豊2100形です。とは言っても元々は西鉄1000形で、北九州線の路線短縮で余剰となった連接車を筑豊が引き取ったものです。それにしても車号だけは変えてありますが、塗装もそのままでなにも改造されていません。この当時西鉄には1000形がまだ5編成在籍していたので、一瞬どっちの車両なのか戸惑いますが、「微妙な共存」においては、どうでも良い話です。

 

6.筑豊2007B+C+A (西黒崎:1993年11月)

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 この3連接車も元は西鉄の車両ですが、筑豊2000形です。筑豊電鉄は1956年開業の新しい路線で、西鉄グループであることから、開業時は北九州線の車両が乗り入れて、自社の車両を保有していませんでした。その後1976年から西鉄福岡市内線、北九州線の2連接車を譲受して3連接化し2000形としました。ちなみに路線短縮前の北九州線にも3連接の1000形が在籍していましたが、その車両は筑豊には譲渡されずに廃車されました。

この2000形を見ていると、広電3000形を思い出します。2000形も広電3000形の様に種車の改造履歴が複雑ですが、その話題は別途お伝えします。

 

7.筑豊3003A+B (西黒崎:1993年11月)

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 この時点で、北九州線は両運車でも十分過ぎるほどの輸送需要でした。しかし、対照的に筑豊電鉄の路線は、沿線の宅地化で車両の増備が必要であったことから、北九州線の路線短縮を機に北九州線の2連接車1000形を一挙に譲受し2100形として運用しました。そして、一部の1000形は機器流用により、車体を新製して5編成の2連接車3000形に生まれ変わりました。この車両は吊掛車のニセ軽快電車ですが、何よりも新しい車両なので筑豊電鉄の利用者には歓迎されました。なお、3000形は黒崎には顔を出しますが、折尾には行きません。よって、北九州線の利用者にはうらやましい車両の様でした。やはり「微妙な共存」です。