ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第955話 1985年尾小屋:保存車を拝見する(その3)

今回は石川県立粟津公園の「なかよし鉄道」の車両について、動態保存1年後の1985年9月の様子をお伝えします。

 

1.DC121+ホハフ8+ホハフ3、キハ1 (児童会館前:1985年9月)

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この日は運休日だったので留置車両の写真しか撮れませんでした。しかしながら、ここの車両はガッカリするほど綺麗で、なんだかレプリカのようにも見えました。

 

2.キハ1 (児童会館前:1985年9月)

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まずはキハ1です。この車両は尾小屋鉄道生え抜きである、1937年日本車輌製の元機械式ガソリンカーでした。保存時に車体の更新改造を受けて、新車に生まれ変わった様です。この車両を見た時、税金でここまで綺麗にできるのなら、「現役時代に少しでもバックアップしてあげれば良かったのに」と、思いました。しかし、予算の都合で前面がカマボコになってしまいました。そのうち原型に復元されるだろうと思っていましたが、現在もこのままなのが残念ですが、贅沢は言えません。なお、この車両は車体だけではなく、駆動装置もテコ入れされて、トルコン車になっています。動態保存とは言え、遊覧鉄道的存在なので仕方ありません。

 

3.DC121+ホハフ8+ホハフ3、キハ1 (児童会館前:1985年9月)

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唯一動態保存された機関車のDC121は、1952年協三工業製の12tディーゼル機関車です。完全新製ではなく、足回りは元尾小屋鉄道1号蒸気機関車とのことですが?、ロッド駆動にその名残が伺えます。この機関車も保存時にオーバーホールされて新車並みに蘇りましたが、相棒のDC122は元尾小屋構内で朽ち果てそうなのが気になります。

 

4.ホハフ3+ホハフ8+DC121 (児童会館前:1985年9月)

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ホハフ3、ホハフ8は元三重交通の木造軽便客車でした。尾小屋時代に車体更新を受けて味気ない半鋼製客車となりましたが、それでも軽便鉄道を物語る重要な車両です。

 

5.ホハフ3車内 (児童会館前:1985年9月)

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ホハフ3は、元々浅いシングルルーフで切妻の箱型客車でした。オリジナルはドア配置が変則的でしたが、車体更新時に前後対称のまともなスタイルとなりましたが、つまらない車両になりました。

 

6.ホハフ8車内 (児童会館前:1985年9月)

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ホハフ8は、以前はダブルルーフで元荷物室扉付きの3ドア車でした。こちらも車体更新により、まともなスタイルになりましたが、妻形状はオリジナルを踏襲した3枚窓です。ホハフ3もホハフ8も、車体更新当時の世相を反映するHゴムを採用しており、このあたりが、北陸地方のローカル私鉄に共通するブサイク車両と言えます。

さて、あれから37年が経ちましたが、尾小屋鉄道の保存車は健在です。これは奇跡的と言うか、熱心な保存活動の賜物以外の何物でもありません。しかし、「保存」とは、裕福な時代の副産物です。昨今、地方都市を襲う財政難は、保存車両にとって天災のごとく、いつ牙を剥くか分かりません。