ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第784話 1993年熊本市交:新しいもの大好き(その3)

さて、熊本市交通局は1982年に国内で初めてVVVF制御の路面電車を導入した路線です。軽快電車の先駆けであった、広電や長崎電軌がチョッパ車でモタモタしている間に、VVVF車の実績を手掛けました。その頃のパートナーは日本車輌でしたが、路面電車で一旗揚げようと、アルナ(ナニワ)車がいない熊本市交に歩み寄った意気込みが感じられます。一方、熊本市交通局の方は、意外にも初物がお好きな様で、国内初の路面電車の冷房化もそうでしたが、この4年後に登場するLRVも国内初の導入でした。

 

1.8201 (電報局前~水道町:1993年9月)

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 この車両が、国内初のVVVF路面電車である8200形(注1)です。一見、当時流行したアルナ製の軽快電車スタイルですが、よく見ると片方だけ密着連結器が付いており、台車はインサイド軸受タイプでモノモーター方式による2軸駆動の奇妙な電車です。

 

2.8202 (電報局前~水道町:1993年9月)

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もう1両の8202です。基本的に8201と同じ車両ですが、連結器は8201とは逆寄りに着いており、8201とは連結できる仕様になっています。連結運転の計画でもあったのか?それとも万一の故障に備えて相棒を救援する目的でもあったのか?しかし、排障器の内側を見ると大きなフィルタリアクトルらしきモノが付いており、これでは連結器を付けるスペースがありません。床下は搭載機器でギュウギュウ詰めです。

(注1)8200形の車歴

熊本市交8201,8202:1982年日本車輌

結局、8200形は2両しか導入されませんでした。まだまだ試作的要素がいっぱいのこの車両は、いろいろあったのかも知れませんが、どこかの元祖軽快電車よりは、しっかり働いている様でした。

 

3.8501 (電報局前~水道町:1993年9月)

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 続いてこの電車は、一見8200形そっくりのモドキです。この車両は8500形(注2)と称し、1985年~1986年に廃車となった1200形の臓物を流用してアルナ工機で4両製造されました。車体デザインは8200形そっくりですが、前ドアが引き戸となり、台車もインサイド軸受ではありません。そして、メーカーが日本車輌ではなく、アルナ工機になりました。せっかく国内初のVVVF路面電車を手掛けた日本車輌でしたが、何かあったのか?

 (注2)8500形の車歴

熊本市交8501,8502:1985年アルナ工機

熊本市交8503,8504:1986年アルナ工機

 

4.8801 (電報局前~水道町:1993年9月)

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さて、8200形以降増備が途絶えていたVVVF車は、1988年に8800形(注3)として、アルナ工機で2両製造されました。 もうその頃になるとVVVF車が路面電車でも主流になっていましたが、なぜかアルナ工機の独壇場でした。

(注3)8800形の車歴

熊本市交8801,8802:1988年アルナ工機

8800形は前後2扉のドア配置となりましたが、このドア配置はこの形式だけに終わりました。

 

5.9204 (電報局前~水道町:1993年9月)

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  そして、この車両は、この当時一番新しいVVVF車である9200形(注4)です。1992年~1994年に5両がアルナ工機で製造されました。スタイルは前中2扉タイプに戻りました。やはり前後2扉では乗降に問題があったのでしょうか?

 

6.9204 (通町筋~市役所前:1993年9月)

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 (注4)9200形の車歴

熊本市交9201,9202:1992年アルナ工機

熊本市交9203,9204:1993年アルナ工機

熊本市交9205:1994年アルナ工機