ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第179話 1987年江ノ電 まだ江ノ電らしかった頃(その4)

江ノ電300形のラストは第6編成のデハ306+デハ356です。

しかし、ラスト編成なのに車体新製した第5編成から激変で、その容姿は先祖帰りした様でした。

 

1.デハ356+デハ306-デハ352+デハ302 (稲村ケ崎七里ヶ浜:1987年4月)

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この300形第6編成(注1)は、300形の中で最もゲテモノでした。 

ヘルメットを被ったような風貌ですが、この車両は1968年に2両連結車だった200形を2連接車化した車両で、これも元は都電でした。よって、300形第1編成にも通じるものがあります。しかしこの2両は同じ都電とは言え、別形式の車両だったので、車体構造が異なり、よく見ると後方のデハ306のほうが幕板の幅が広く、車体高さが異なる凸凹コンビです。

(注1)300形第6編成の車歴

江ノ電デハ306←江ノ電デハ201←江ノ電デハ202Ⅱ←都電150形←王子?:製造年、製造所不詳

江ノ電デハ356←江ノ電デハ202←江ノ電デハ112Ⅱ←都電174←王子2181924年田中車輌製

※デハ306は元を辿ると都電荒川線の前身である王子電軌の車両とのことですが、残念ながら、実態が不明です。

 

2.デハ356+デハ306-デハ354+デハ304 (江ノ島:1987年5月)

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 第6編成のデハ306+デハ356が誕生した経緯ですが、もともと輸送力強化のため1955年に両運車を2両固定連結して営業に投じた最初の車両です。特別な改造もされず、200形デハ201+デハ202と称していました。しかし、2両連結車は運用上いろいろと課題があり、その後の増備車はすべて2連接車となり、1968年に200形も300形ラスト編成として2連接車化されました。

なお、200形は特に車体修繕がされていなかったので、2連接車化の際に根本的な更新が実施されました。その結果ノーシル・ノーヘッダーのヘルメットスタイルになりましたが、この2両は全く別な車両だったので、どうしても外観の統一が図れず、ゲテモノ化してしまいました。やはりゲテモノ=異端車であったことから、延命対象とはならず、300形では一番早く廃車されました。

 

3.デハ601+デハ651 (極楽寺:1987年5月)

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 1987年当時、江ノ電には玉電がいました。

この車両は600形(注2)と称し江ノ電ではイレギュラーな2両連結車でした。これは車両増備のため、元東急玉川線のデハ80形を1970年に4両譲受したものです。この時点では、デハ601+デハ651の2両が残っていましたが、本家の東急世田谷線にはまだ同形車が多数活躍していました。

 

4.デハ601+デハ651 (極楽寺:1987年5月)

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(注2)600形の車歴 

江ノ電デハ601←東急デハ87←東急デハ104←東急デハ29←玉川45:1924年蒲田車輌製

江ノ電デハ651←江ノ電デハ602←東急デハ88←東急デハ105←東急デハ22←玉川38:1924年蒲田車輌製

 

600形はもとをただせば、東急玉川線の前身である玉川電軌の木造車36形にまで遡ります。1953年に川崎車輌で鋼体化されてこのスタイルになりました。

江ノ電導入時には2連化され、ステップの撤去と軌間が違ったため台車の改軌が行われました。

 

5.デハ501+デハ552、デハ601+デハ651 (江ノ島:1987年5月)

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 600形は導入当初は江ノ電で一番輸送力があり、ラッシュ時に重宝されましたが、2連結車で乗り心地が悪く、乗務員扉がないので客扱いが不便など、新車が導入されると徐々に予備車になってしまい、普段は車庫で昼寝が多くなりました。

 

6.デハ108 (極楽寺:1987年4月)

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 ほとんどの車両が2連接車となりましたが、1両だけ両運車が残っていました。これは動態保存を目的にしていた、江ノ電の“お宝”車であるデハ108(注3)です。現車は1980年に廃車となり、その後は極楽寺車庫の入換車として残存していました。

この時は、ちょうど修繕中でした。現在も愛称「タンコロ」として保存されています。

(注3)デハ108の車歴

江ノ電デハ108:1917年新潟鐵工所

ところで、デハ108そして300形第4編のデハ304+デハ354(旧デハ106、デハ109)は共に製造メーカーが新潟鐵工所でした。意外にも新潟鐵工製の電車が江ノ電に納入されていたわけですが、昔は新潟鐵工も電車を造っており、特に路面電車に関してはかなりの納入実績がありました。しばらく電車(新交通システムを除く)の製造から遠ざかっていましたが、超低床式のLRVの製造で路面電車市場に復活し、現在は後継会社の新潟トランシスに引き継がれています。