ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第201話 1988年銚子:ぬれ煎餅じゃなく鉄道が本業?の頃

関東近辺の私鉄で一番遠く感じたのが銚子電鉄でした。

銚子電鉄には1984年にも訪問しており、今回の1988年は2度目の訪問です。この4年間の変化は、デハ801と遊覧トロッコのユ101の増備でした。なお、ユ101は当時NHKの連続ドラマが銚子を舞台に放映されたことに便乗して、観光客を誘致するために導入されたものでした。ところで、銚子電鉄は観光鉄道ではなく、銚子市内の市内電車的な存在です。しかし、銚子電鉄は市街地も通らず、営業距離はわずか6kmたらずの零細路線で、経営状況は常に危うく、度重なる苦難を副業で切り抜けて現在も盛業中です。

当時の副業は、まだぬれ煎餅ではなく、直営の「たい焼き屋」でしたが、たい焼きで鉄道会社が維持できるわけはなく、当時は国の補助金で成り立っていた様です。

 

1.デハ702、デハ701 (仲ノ町:1988年10月)

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 1988年当時の主力車は、1978年に近江鉄道からやって来たデハ700形(注1)のコンビです。近江時代この車両は共に同形の片運車でしたが、銚子に来る際に両運化されて元の連妻面を3枚窓の非貫通としたため前後で異なる顔になりました。そして、この2両は総括制御が可能で、ラッシュ時や多客期は2連で使用されました。

写真は2両共オリジナルの2枚窓の前面で、銚子寄りから撮影したものです。

 

2.デハ702 (仲ノ町:1988年10月)

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 デハ700形は、元々1928年製の木造電動貨車を日本鉄道自動車にて1941年に鋼体化し、台車と機器を流用した改造名義です。いずれ近江鉄道についても報告しますが、近江鉄道の車両は車歴がとんでもなく複雑です。

 

3.デハ701 (仲ノ町:1988年10月)

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 (注1)デハ700形の車歴

・銚子デハ701,702←近江モハ51,52←近江デユワ101,102:1928年川崎造船

デハ700形の前身である近江モハ50形は近江鉄道初の半鋼製車でした。また、その前身であるデユワ100形は近江鉄道が全線電化時に導入した電動貨車ですが、車体は新製で機器類は宇治川電気からの払い下げ品でした。

 

4.デハ501+ユ101 (仲ノ町:1988年10月)

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 デハ501(注2)は1972年に上田交通から譲受した車両です。元々両運車でしたが、上田交通時代に片運化されてMTMの3連で使用されていましたが、銚子へ転籍時に再び両運化されました。このため、元連妻面には貫通扉が残り、この車両も前後で顔が異なります。

ところで、このデハ501も元を遡れば近江鉄道のクハでした。上田交通の前身である上田丸子電鉄が近江鉄道クハ23を譲受し、1950年に自社にて電動車化したものです。半鋼製車で車両長が11mで路面電車並みの小型車ですが、ドアエンジン付きで間接自動制御でした。

 

5.デハ501非貫通方車内 (仲ノ町:1988年10月)

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 デハ501の車内の写真を撮っていたので追加しました。この写真は非貫通の運転室方向を写したものですが、この小さな車両が全室の立派な運転室を備えていました。

そして内張や窓枠はすべて木製です。

 

6.デハ501貫通方車内 (仲ノ町:1988年10月)

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一方、貫通側は半室運転室です。こんな小さい電車なのに運転室はしっかり仕切られていました。

 (注2)デハ501の車歴

・銚子デハ501←上田モハ2321←近江クハ23:1939年日本鉄道自動車製

なお、名義上は、近江クハ23←近江クハニ23←サハニ23←電1形3:1925年加藤車輌製

ここでも車歴の呪縛が・・・・元近江鉄道の車両はとのかく車歴がややこしいです。

銚子では、どちらが先輩なのか後輩なのかよく分りませんが、このデハ501とデハ700形はおよそ30年ぶりに再会することになりました。

デハ501はせっかくの間接自動制御で片貫通でしたが、総括制御できる相棒がおらず、小型車だったので、1988年当時は予備車的な存在になっていました。

しかし、時々デハ501+デハ101+デハ301の3連非総括制御で運転されていました。この3連は以前はラッシュ時の限定運用で存在していましたが、中間のデハ101はトレーラー扱いで、両端のデハ501とデハ301に運転手さんと車掌さんが乗務していました。