ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第205話 1990年南海(貴志川):南海の離島

かつて南海電鉄には本線につながらない離島路線が存在しました。

それが南海電鉄貴志川線です。この路線はもともと山東軽便鉄道として大正時代に開業したもので、その後紆余曲折の経緯を経て南海電鉄の一員となりましたが、南海の本線とは接続しないため、南海に合併後も独自の車両陣容がしばらく続きました。しかし、いずれの車両も寄せ集めたものばかりで、お隣の野上電車とは、どんぐりの背比べ状態でした。

そして昭和40年代となり、やっと本線からお払い箱となった旧型車が転じて来たので、ようやく南海電鉄の一員らしくなりましたが、その後車両は、1971年に本線の昇圧で追い出されて来た1201形に統一された以降はほとんど変化なし状態が20年以上続きました。

今回は、その1201形が余生を送っていた1990年頃の貴志川線の話題です。

 

1.モハ1201+モハ1200形 (伊太祁曽:1990年2月)

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 貴志川線は、現在南海電鉄から切り離されて、なぜか岡山の両備グループの傘下となり、和歌山電鉄という新生会社に生まれ変わりました。

結局、貴志川線南海電鉄の不要家族だったわけですが、1990年代は南海電鉄の隠れ蓑にしっかり守られて、去り行く野上電車を横目に見ていました。

 

2.モハ1201+モハ1200形 (伊太祁曽:1990年2月)

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 ところで、当時私はお隣の野上電鉄ばかり気にしていました。貴志川線は大手の南海電鉄なのでまず廃止になることはなく、車両は老朽化してはいましたが、本線から持ってくる適当な車両もなく、しばらくはこのまま大丈夫だろうと確信していたからです。

そんなわけで、和歌山方面には結構出向きましたが、いつも貴志川線は通過でした。

 

3.モハ1202+モハ1213 (伊太祁曽:1990年2月)

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 そして、貴志川線の初訪問は1990年でした。この時は天気も良かったのですが、走行撮影の前に先ずは形式撮影です。ちょうど伊太祁曽駅は形式写真をとる絶好の場所だったので、ここで粘ってこの日運用されていた車両を撮影しました。

 

4.モハ1213車内 (伊太祁曽:1990年2月)

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もともと1201形は、1934年に木造車の鋼体化名義で製造された18m級の汎用車両で、当初はモハ133形を名乗りました。その後改番されて1201形となり、電3形の鋼体化名義の車両も1201形に統合されました。その後も新製車として増備が続きますが、事故車の機器流用車や他形式からの編入車なども含めて戦時中の1944年まで増備が続きました。

その結果、モハ1201形は42両、同型のクハ1901形は19両となりましたが、結構長期間にわたり製造されたので、形態的には6グループに区分されます。全ての車両が南海の血統車ですが、修繕や形式変更などその車歴の変遷はめまぐるしく、なかなか全車の車歴が理解し辛い車両でした。

 

5.モハ1234+モハ1200形 (伊太祁曽:1990年2月)

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 1990年当時の貴志川線に在籍した1201形(注1)は、モハ1201~1204が鋼体化名義で、その他は新製名義でした。全ての車両が1973年に貴志川線に転入となり、それまで在籍していた1201形(7両)は廃車になりました。

(注1)1990年当時在籍した1201形の車歴

・モハ1201,1202←モハ134,135:1934年南海天下茶屋工場製

・モハ1203,1204←モハ136,137:1934年日本車輌

・モハ1210,1213:1936年日本車輌

・モハ1217:1937年日本車輌

・モハ1218:1937年汽車会社製

・モハ1234:1938年木南車輌製(事故車機器流用)

・モハ1241←モハ1563←モハ1237←クハ1237←クハ1912:1941年汽車会社製

 

6.モハ1210+モハ1200形 (伊太祁曽:1990年2月)

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 1201形のうち、モハ1201~1204の4両は両運車で、モハ1213,1217,1241は貴志川寄りが運転席の片運車、モハ1210,1234は和歌山寄りが運転席の片運車でした。

これら10両は常時2連で使用されていましたが、特に編成相手は限定していませんでした。