ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第1018話 1994年水間:お寺の電車?

1994年10月、それまで全く縁のなかった水間鉄道を訪問しました。その頃の水間鉄道は、全車が元東急7000系に置き替わっており、見に行く理由などありませんでしたが、終点の水間に淘汰されたクハ553が保存されていたので、それを見るためでした。

 

1.デハ7103+デハ7003 (貝塚:1994年10月)

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水間鉄道と言えば、終点の水間観音が有名です。南海電鉄の子会社でもなく、創業時から一貫して独立した地方鉄道なので、私はてっきり、この鉄道は水間観音の参拝用に開通した鉄道で、当然水間観音と資本関係があるものと思っていましたが、実態は全く関係はありませんでした。しかし、独立した企業だったがために、バブル期の不動産投資に失敗し、倒産してしまいます。その後、うどん屋さんに助けられて、無事に再建され現在に至ります。今回は倒産前の、昇圧と車両体質改善が完了し、まだバブル景気の余韻で活気があった頃の様子です。

 

2.デハ7151+デハ7051 (貝塚:1994年10月)

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水間鉄道の昇圧は1990年でした。同じ頃、各地の地方鉄道も体質改善で昇圧や大手私鉄からまとまった両数の中古車を譲受して新装開店が流行っていました。その頃は東急電鉄7000系を放出していた時期で、弘南鉄道北陸鉄道に続いて水間鉄道も、それまでの南海電車のお古を淘汰して7000系を譲受しました。

 

3.モハ553 (水間:1994年10月)

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その淘汰された古い南海電車が、水間に1両保存されていました。このクハ553(注1)です。しかし、保存車なのに当時は広告電車のままでした。この電車は元南海1201形の1段窓タイプです。元東急7000系が導入される前は、この電車の同形車が12両在籍していました。自社のオリジナルでもないこの電車を、なぜ保存したのかわかりません。ちなみに、この当時この電車の仲間は本家の南海貴志川線でまだまだ主力車として健在でした。そう言えば、淘汰されたこの他の車両は、一部野上電鉄に売られました。本来なら、野上電鉄で最後の奉仕をしていたはずですが、その後の顛末については、第210話をご覧下さい。

 

4.モハ553 (水間:1994年10月)

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(注1)クハ553の車歴

・水間クハ553←水間モハ510←南海モハ1240←南海クハ1913Ⅱ:1942年木南車輌製

ところで、この電車はクハなのにパンタグラフが乗っています。保存車を電車ぽく見せるための演出かと思いましたが、実は、この車両は元々モハだったものをクハ化し、元から付いていたパンタグラフを予備として流用していたとのことです。

 

5.デハ7152+デハ7052 (水間:1994年10月)

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ついでに、7000系(注2)について触れますが、7000系は2連で5編成導入されました。すべて電動車ですが、元東急デハ7100形を種車とするデハ7100形+デハ7150形は、元々中間電動車だったので、非貫通の運転台を新設しています。弘南鉄道北陸鉄道福島交通に導入された元東急7000系にも同様な改造車が存在します。

 

6.デハ7102 (水間:1994年10月)

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(注2)7000系の車歴

①前面貫通車:デハ7000形+デハ7050形

・水間デハ7001,7002,7003←東急デハ7008,7010,7012:1963年東急車輛

・水間デハ7101,7102,7103←東急デハ7007,7009,7011:1963年東急車輛

②前面非貫通車:デハ7100形+デハ7150形

・水間デハ7051←東急デハ7128:1964年東急車輛

・水間デハ7052←東急デハ7110:1963年東急車輛

・水間デハ7151,7152←東急デハ7127,7139:1964年東急車輛

 

7.デハ7001+デハ7101 (水間:1994年10月)

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7000系は、導入当初デハ7100形+デハ7150形の2編成のみが冷房車でした。全車を冷房化しなかったのは予算の都合だったのか?その後の水間鉄道小鉄道ですが堅調に運行されていましたが、バブル期の不動産負債のため前述の通り経営破綻を経験します。