ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第273話 1988年伊豆箱根(駿豆):こだわりの西武モドキ(その2)

私は以前から駿豆線の車両には全く興味がありませんでした。

なぜなら大手の西武電車モドキだったからです。もっとも、伊豆箱根鉄道西武グループだったので西武電車が走っていても不思議ではなく、仕方ありません。

ところが、1000系の第1~第4編成(注1)は、どうせ西武電車のコピーだろうと思い込んでいたのですが、実はそうではなく、微妙に伊豆箱根のこだわりが伺える西武電車モドキであることを当時知りました。

やはりグループ会社とはいえ、差別化を図りたかった本音のようなものがチラホラ見えます。ちょっと興味深いので、少々話題に触れます。

 

1.モハ1003+モハ1004+クハ2002 (大場:1988年11月)

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この日は、ED32が撮影できたので帰ろうかと思いましたが、せっかく来たので車庫を訪問しました。もう夕方なのでまともな撮影ができませんでしたが、1000系が3本いました。 

こちらは、1000系第2編成です。1000系は第1編成と第2編成がほぼ同形です。いずれも自社製新造車ではありますが、車体を西武所沢で製造して、艤装を自社の大場工場で行っており、機器類も中古品流用の吊掛車です。一応観光路線なのでセミクロスシート車になりました。前面は西武551系の前照灯を左右腰部に下げたような格好をしていますが、側面はセミクロスシートに合わせた側窓の割り付けで、戸袋窓がなく伊豆箱根のオリジナルです。

第1編成と第2編成の違いは、第1編成はMTMであったのに対し、第2編成以降はMMTとなり、また、第2編成は前面窓の内側に行き先表示器を搭載して若干近代化ぽくなりましたが、なぜか床が板張りでした。

 

2.モハ1005+モハ1006+クハ2003 (大場:1988年11月)

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 この車両は自社発注の1000系第3編成です。第3編成も車体は西武所沢製で艤装は手持ちの中古機器を使用して自社の大場工場で行ったという西武モドキです。外観は前面のおでこに大きな行き先表示器が付き、こんどは西武701系ぽくなりました。なんだか西武電車の間違い探しをしている様ですが、行き先表示器の左右に標識灯が付いているのがこの電車のオリジナルです。なお、第3編成はロングシート車となり、戸袋窓も付きましたが、側窓の割り付けは従来通りです。

この第3編成は自社発注の1000系で唯一ロングシート車で、外観上は戸袋窓付きなので一目でわかります。吊掛車ですが、1989年にカルダン車化されました。

 

3.モハ1007+モハ1008+クハ2004 (大場~三島二日町:1988年11月)

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 まだ日没まで多少時間があったので、本線の列車も少し撮影しました。

この写真は、自社発注の1000系では最終増備となった第4編成です。第3編成がベースになっていますが、第4編成は再びセミクロスシート車になり、戸袋窓もなくなりました。1971年製ですが、相変わらず吊掛車です。

(注1)1000系(第1~第4編成)の車歴

・駿豆モハ1001+サハ2001+モハ1002:1963年自社大場工場製

・駿豆モハ1003+モハ1004+クハ2002:1964年自社大場工場製

・駿豆モハ1005+モハ1006+クハ2003:1969年自社大場工場製

・駿豆モハ1007+モハ1008+クハ2004:1971年自社大場工場製

その後、第3、第4編成は1989年にカルダン車化されますが、第1編成は1991年、第2編成は1992年に廃車となり、第1編成は大井川鉄道に転じます。

 

4.クモハ3001+モハ3001+クハ3501 (大場~三島二日町:1988年11月)

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 ついでに当時の新車です。新車の3000形3連は1979年から導入されており、この時点で5本も在籍していました。初期車は導入からもう9年も経ち、3000形は駿豆線の看板電車になっており、フル稼働されていました。

 

5.クモハ3001+モハ3001+クハ3501(大場~三島二日町:1988年11月)

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 さすがに3000形は西武モドキから脱皮した東急車輛製の完全新製の冷房付きカルダン車になりました。こんどは国鉄の近郊電車のような形態となりましたが、1987年製の第5編成からは車体がステンレスとなり、その後は、新設計の7000形に移行し、7000形は2本導入されましたが、さらにその後、最終的に3000形は第6編成まで増備されました。

 

6.クモハ3005+モハ3005+クハ3505 (大場~三島二日町:1988年11月)

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 この日は勢いで、全く興味がない新車まで撮影してしまいましたが、その後も駿豆線には全く興味が湧かず、駿豆線訪問はこれが最初で最後のまま現在に至ります。

現在はもう西武電車モドキもいなくなり、今後も駿豆線には積極的に出向く可能性は少ないと思いますが、西伊豆あたりの温泉に行くときは、遠回りでも利用したいと思います。