ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第291話 1989年三岐:本業はセメント輸送?(その2)

三岐鉄道の話題が電気機関車から電車になりましたが、三岐鉄道はその昔非電化の時代がありました。もちろんその当時のことは私も知りませんが、あの別府鉄道の気動車や客車が三岐出身で、非電化の頃活躍していました。特に別府鉄道のキハ2は元三岐鉄道の発注車で、同じ仲間が4両いました。

三岐鉄道は電化後も国鉄四日市へ乗り入れるため気動車を何両か保有し、1964年の四日市乗り入れ廃止後も、別府鉄道キハ2と同形車のキハ4が1975年まで救援予備車として残りました。

 

1.モハ156+モハ155 (保々:1989年1月)

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 話題は電車に戻ります。三岐鉄道には元相模鉄道2000系クハ2500形の車体を流用した両運車であるモハ155,156(注1)がいました。この時点で既に廃車されていた様です。

ところでこの車両は中古車ではなく、認可上は1974年製の新製車扱いでした。これは、相模鉄道のクハ2500形の車体に西武の戦災復旧車であるクモハ311形の機器を流用して、西武所沢工場にて製造されたもので、先に導入されたモハ150,151の増備車として形式もモハ150形に仲間入りしたものです。しかし、モハ150,151が車体新製されたのにモハ155,156は中古車の車体を流用した理由が分かりません。恐らく製造コストを抑えるためだったのでしょうか。

(注1)モハ150形(モハ155,156)の車歴

・三岐モハ155:1974年西武所沢製(車体の実態:←相模クハ2512←国鉄クハ16160←国鉄クハ38112←国鉄モハ30172:1928年日本車輌製)

・三岐モハ156:1974年西武所沢製(車体の実態:←相模クハ2513←国鉄クハ16161←国鉄クハ38097←国鉄モハ30193:1928年日本車輌製)

モハ155,156は同じモハ150形のモハ150,151に比べてかなりくたびれた感じの車両です。そもそも相模鉄道クハ2500形の車体と西武の戦災復旧車の機器を組み合わせた車両というのがすごい発想です。かつて在籍していたカルダン車のモハ120形に比べてもかなりのレベルダウンは否めません。なお、母体となった相模クハ2500形ですが、この車両は相模鉄道が戦後の混乱期に寄せ集めた旧国などの17m雑多車両を一括りにして1960年代に形態統一を図って誕生したものですが、この車両の車歴も凄まじいです。1989年当時は元相模2000系を種車とする車両が、三岐以外にも伊豆箱根鉄道大雄山線日立電鉄などで活躍していました。

 

2.クモハ505+サハ1505Ⅱ+クモハ506 (保々:1989年1月)

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 三岐鉄道が西武化するきっかけとなったのが、このクモハ501形、サハ1501形(注2)です。

この車両は元西武501系で、3連2編成を譲受しました。20m車の3連固定だったので、ラッシュ時の輸送力強化に貢献しました。1編成目は1977年、2編成目は1980年の導入ですが、1編成目の中間車だったサハ1505は老朽化のため1980年に廃車となり、2代目のサハ1505に交換されました。

1989年当時の編成は下記の通りでした。

・クモハ505+サハ1505Ⅱ+クモハ506

・クモハ525+サハ1525+クモハ526

 

3.クモハ526+サハ1525+クモハ525 (保々:1989年1月)

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 (注2)クモハ501形、サハ1501形の車歴

・三岐クモハ505←西武クモハ505←西武モハ505Ⅱ←西武モハ213?:1930年川崎造船製(西武モハ505Ⅱ:1959年西武所沢製)

・三岐クモハ506←西武クモハ506←西武モハ506Ⅱ←西武モハ214?:1930年川崎造船製(西武モハ506Ⅱ:1959年西武所沢製)

・三岐サハ1505Ⅱ←西武サハ1523:1957年西武所沢製

・三岐クモハ525←西武クモハ525←西武モハ525:1958年西武所沢製

・三岐クモハ526←西武クモハ526←西武モハ526:1958年西武所沢製

・三岐サハ1525←西武サハ1525:1958年西武所沢製

 ※西武モハ505Ⅱ、506Ⅱは1959年西武所沢工場製ですが、認可上は武蔵野鉄道の車両名義を引き継いでいる様です?。しかし、実態がよくわかりません。

 

4.クハ1608 +クモハ607 (保々:1989年1月)

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 そして、カルダン車のモハ120形を追いやったのが、このクモハ601形、クハ1601形(注3)です。一目瞭然、言わずと知れた元西武電車です。車体色まで西武電車のようですが、微妙にやまぶき色です。導入に際して前照灯が変更された以外は外観上の変更はありませんが、導入後に台車は京王井の頭線から購入したものに交換されました。

三岐鉄道がこの車両を導入した背景には、カルダン車だったモハ120形が17m車であったため、輸送力不足だったことと、ちょうど西武鉄道が地方私鉄向けに、20m車の451系を放出していた時期でもあったためです。同じ頃に一畑電鉄も同形車を購入していましたが、この頃は各地に広まる西武電車に、地方私鉄の旧型車淘汰と西武化の脅威を感じていました。

 

5.クモハ605+クハ1606 (保々:1989年1月)

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 1989年時点でクモハ601形+クハ1601形は4編成8両が在籍していました。最初1981年に西武451系2連が3編成まとめて導入され、1988年に西武571系2連が1編成導入されました。この西武571形は西武451形の増備車として製造されたサハを電装化した形式です。

1989年当時の編成は下記の通りでした。
・クモハ601+クハ1602  ・クモハ603+クハ1604 
・クモハ605+クハ1606  ・クモハ607+クハ1608 

 

6.クモハ607+クハ1608  (保々:1989年1月)

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 (注3)クモハ601形、クハ1601形の車歴

・三岐クモハ601,603,605←西武クモハ451,453,471:1959年西武所沢製

・三岐クハ1602,1604,1606←西武クハ1488,1490,1472:1962年西武所沢製

・三岐クモハ607←西武クモハ577←西武モハ577←西武サハ1569:1962年西武所沢製

・三岐クハ1608←西武クハ1578←西武サハ1577←西武サハ1570:1962年西武所沢製

この後も西武から401系や701系がやって来て、三岐鉄道はあっと言う間に西武三岐線化します。

 

さて、この日は天気が悪かったので、在籍車両をざっと見ただけで終わりでしたが、改めて天気の良い日に出向くことにしました。写真の出来もご覧の通り悪く、この三岐鉄道の投稿はパスしようかと思いましたが、初訪問だったことと、モハ155,156はこの時が見納めとなってしまったので、当時の記録ということで投稿しました。