ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第11話 1990年高松琴平 古い車両を求めて!(その4)

1990年頃はまだPCの普及もほとんどなく、当然ネットによる情報検索などありませんでした。よって、鉄道車両の情報などは鉄道誌が唯一の情報源だったわけですが、それもローカル私鉄になると情報は曖昧なことが多く、とにかく現地に行ってみないと、本当のことが分からない状況でした。琴電の情報もいろんな鉄道誌で、どんな車両がいるのかは分かっていましたが、個々の車両がどんな状態にあるのかまでは分からず、行ってみてのお楽しみでした。しかし、いつ行っても車庫の奥に突っ込まれていて、まともに写真も撮れない車両があり、これが悩みでした。1990年には琴電を3回訪問しましたが、結局撮影できなかったのは、5000形、67です。その他にも天気が悪かったり、検査入場中でまともな写真が撮れなかったのが230、62でした。これらの車両の撮影が叶ったのは1991年以降となってしまいました。

1.3000形同士MM2連 315+345(沖松島~春日川:1990年11月)

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2.3000形MT2連 335+890(瓦町:1990年11月)

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3.100(瓦町:1990年11月)

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琴電には創業時からの生え抜き車両が在籍していました。琴電は開業に備えて1000形5両、3000形5両を新製しました。このうち事故廃車となった1000形110,140の2両を除く全車が健在でした。1000形と3000形の相違はメーカーが異なり、1000形は汽車会社製、3000形は日本車輌製です。また、両車の形態は殆ど同じですが、1000形は窓上コーナーにRがついており、ウインドヘッダーがなく、妻面の台枠車端部に切り欠きがある点が外観上の違いです。よって3000形は1000形より角ばって精悍に見えますが、当初は戸袋窓が丸窓で、優雅な大正電車でした。いずれの車両も大正末期の1926年製造で他社の同年代車両と相通じるデザインです。ところで、1000形も3000形も車号の付け方が変則的でした。1000形は100,110,120,130,140、3000形は300,315,325,335,345です。琴電は車両番号が形式番号より1桁小さかったり、モハ、クハの区別がなく電動車と制御車が同形式で車号が連番だったり、番号付けのルールがあるのかないのか?非常に不可解でした。

1000形、3000形は琴電の顔として長年君臨してきましたが、近代化には敵わず2007年に勇退し、120と300が500と共に近代化産業遺産となり動態保存されている他は、廃車されました。

4.860(瓦町:1990年11月)

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琴電は1975年に廃止された山形交通から3両のモハを譲受しました。そのうちの1両が860(注1)です。同僚で同じ運命を辿った870と共に山形時代に車体更新され、非貫通前面2枚窓の独特な風貌となりましたが、琴電では当初この2両を連結して琴平線で運用するため、各車の連結側妻面を貫通化し、その後860は両妻面とも貫通化されました。860,870は1983年に両運車のままクハ化され、その後は長尾線志度線で活躍しましたが、志度線分断後は860,870共に長尾線専属となり750形とコンビを組み、1998年に廃車となりました。

(注1)860の車歴:琴電860(クハ)←琴電780(モハ)←山形交通モハ111←西武モハ225←西武モハ255←西武モハ205:1941年梅鉢鉄工所製

5.名脇役のデカ1(仏生山:1990年12月)

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デカ1は事業用車ですが車籍があります。1957年に2軸貨車の台枠を延長して自社製造されたそうです。専ら仏生山車庫内の入換用ですが、この車両は旧型車が淘汰されるなか、機器や台車更新を行い、現在も健在です。

6.終戦混乱期の証し11000形のダルマ(瓦町:1990年12月)

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当時琴電には第二次大戦後の混乱期を物語る遺産が残っていました。それが写真の廃材置き場に置かれていたダルマ(廃車体)です。一見、鋼製有蓋貨車の車体のようですが半分正解です。ある文献によるとこの車体は、戦後の車両不足時期に有蓋貨車(国鉄ワフ25000形)を制御客車として使用した11000形の残骸とのこと。ほんの短期間の使用だったそうですが、これこそ貴重な産業遺産です。しかしながらこの廃車体はいつの間にか処分されてしまいました。