ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第165話 1984年上信 田舎の看板電車

今回は1984年の上信電鉄です。

お隣の上毛電鉄は非常に地味な存在でしたが、こちらの上信電鉄は対照的に派手な存在でした。派手と言うか、話題性のある車両が多かったです。

 

1.デキ3、デキ2、デハ200系 (高崎:1984年4月)

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 上信電鉄は非常に歴史が古く、明治30年開業の上野(コウズケ)鉄道にまで遡ります。その上野鉄道は蒸気動力の軽便鉄道でしたが、1921年(大正10年)に改軌、電化を行い上信電鉄となり、その際に導入されたシーメンス製の輸入電気機関車デキ1~3が健在でした。

電化後は、電車も新製導入されましたが、一部は鋼体化されてデハ20形、デハニ30形となりこれも健在でした。

 

2.上信の代表車両たち (高崎:1984年4月)

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上信電鉄は地方私鉄では珍しく自社発注の新車導入に精力的で、1000系や6000系はその豹変した外観が話題となり、 上信の看板電車として、こんにゃく畑や桑畑を横目に力走していました。ところで、この時の訪問目的は新車ではなく、デキを見るためでした。

 

3.1000系 (下仁田1984年4月)

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 下仁田には場違いな?この車両は、上信電鉄が誇る3両固定編成の1000系(注1)です。

私はこの類の車両には全く興味がありませんが、1000系を語らずして上信は語れない程の奇抜な車両なので、少々話題に触れます。1000系は登場時この外観デザインが相当インパクトがあり、しかも、どういうわけか上信電鉄という地方私鉄に突如現れたことから話題を呼びました。一説によると、メーカーの新潟鐵工所が、久々の電車受注に電車製造の復権を目論んだ車両で、見るからに気合を入れ過ぎた感じがします。しかし、性能的には当時の国電並の抵抗制御車で、前面デザインに比して側面は103系後期車の妻窓(ユニットサッシ)をそのまま側窓に採用したという少々安っぽい設計です。

そんな裏話はどうでもよいですが、この車両は上信電鉄の看板電車として沿線も誇る"虎の子”的存在となりました。しかし、やはりこの路線に3連は輸送力過剰で、いつしかラッシュ時の限定運用になってしまい、“宝の持ち腐れ”でした。現在、1000系は2連化されましたが、その改造は先頭車の頭を中間車に移設する大改造で、当時はまだ裕福な時代だったのか、そんな改造など誰も考えず、1000系は下仁田で昼寝をする毎日でした。

(注1)1000系の車歴

・上信クモハ1001+モハ1201+クハ1301:1976年新潟鐵工所

 

4.6000系 (下仁田1984年4月)

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1000系に続く新車は、5年後に導入された6000系(注2)です。

この車両にも興味はありませんが、一応触れておきます。6000系は前面デザインが微妙に1000系から変わりましたが、MM2連となり、座席はクロスシートロングシートを千鳥配置した、これまた新潟鐵工所製です。 上信初の冷房車となり、1000系に代わり昼も走る看板電車となりました。

ところが、6000系は不運な車両で、この年の12月に正面衝突に遭いクモハ6001の前面が大破。しかし1000系以来のバンパーが役に立ったのか、6000系は復活しました。衝突相手の100系102編成は廃車となりましたが、上信電鉄は新車を廃車にするわけにいかなかったのでしょう。

当時は今後この類の新車が増備されるのかと思っていましたが、その後は輸送需要の低迷となり、新車どころではなくなり、次の新車は32年後の2013年に導入の7000系までありません。

(注2)6000系の車歴

・上信クモハ6001+クモハ6002:1981年新潟鐵工所

 

5.デキ2、デハ200系 (高崎:1984年4月)

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 さて、新車とは対照的に古くて有名だったのが、電化時に導入されたシーメンス製の凸型34.5t機のデキ1形(注3)です。3両導入され、以来貨物輸送を担ってきました。上信電鉄の貨物輸送は1994年まで行われていましたが、貨物輸送廃止後も一部は動態保存されています。

(注3)デキ1形の車歴

・上信デキ1~3:1924年ドイツ・シーメンス

 

6.デキ1 (高崎:1984年4月)

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 上信電鉄の貨物輸送は、高崎~南高崎間のセメント輸送と、高崎~下仁田間の石灰輸送がありました。写真は下仁田行きの貨物列車です。貨物はいずれも休日運休のため、なかなか撮影のチャンスがありませんでした。

 

7.ED316 (高崎:1984年4月)

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 ED316(注4)は1両だけ形態の異なる箱型40t機です。当時は従来の電車と同じ車体塗装になっていました。この車両は元国鉄ED316を1957年に譲受したものですが、その前身は元伊那電鉄デキ6です。元々は凸型で当時近江鉄道にいたED31形1の兄弟機ですが、上信に転籍時に箱型に改造されました。

(注4)ED316の車歴

・上信ED316←国鉄ED316←伊那デキ6:1923年芝浦製作所