1984年のレールマガジン誌7月号No.6に連載されていた「THE トロッコ」には、機関車を保有しないトロッコ路線の話題が掲載されていました。その中でも目を引いたのは、愛知殖産越戸鉱山のレポートでした。ヘロヘロの線路は手押し軌道なのか索道なのか?そこは鉱山なのか工場なのか住宅地なのか?。そして、トロッコで作業をする人、トロッコで遊ぶ子供たち、不思議なロケーションは魔境の様相です。
その年の9月に名古屋方面に行く機会があったので、なにはともあれ、越戸鉱山へ行ってみました。
越戸鉱山は、名鉄三河線越戸駅に隣接した場所にありました。陶器の原料となる粘土を工場で精製し、乾燥した粘土板を製品として出荷するところで、鉱山とは言うものの粘土の採掘は行っていなかったようです。
お目当ての軌道は、下図の様に名鉄三河線越戸駅に隣接する荷卸し場と工場を結ぶ本線?と奇怪な支線から成りますが、一般道も横切りどこまでが越戸鉱山の敷地なのかさっぱりわかりませんでした。
ちなみに現在、越戸鉱山はなくなり、軌道は跡形もありません。
上図は、掲載した写真の撮影場所を示した現地のトロッコ路線図です。越戸駅に近い鉱山の荷卸し場から工場に向けて全長200m程の軌道を辿ってみました。今回は写真①~⑥の様子をお伝えします。
それでは、いざ探検開始!!
写真①
越戸駅から鉱山に進むと真っ先に目に入ったのは、写真①の モニュメント?のようなベルトコンベア群です。その下には土砂が貯められていましたが、ここは入荷した原料の土から粘土分を抽出して不要な土砂を排出する設備の様です。
写真②
写真②は越戸駅の側線脇です。ここから三河線の貨物で粘土を運んでいたのかも知れません。写真の掘っ立て小屋はウインチ小屋です。この場所は少し高台なので、ウインチでトロッコを引き上げていた様です。ここには軌道はありませんが、なぜか木製トロッコが放置されていました。
写真③
写真③は、荷卸し場の方に登る勾配区間です。軌道の中に索道用のプーリーが見えます。この勾配を上がると前方にウインチ小屋がありました。
写真の上空に写るのはトラス構造物は三河線の架線柱です。この写真の左側が越戸駅です。
写真④
写真④は写真③の勾配を下った先です。荷卸し場から勾配を下ると平地になり、分岐があり、さらにその先の軌道も枝分かれしています。この写真の左に向かう軌道が本線です。軌道脇の木製の棚は、粘土板を天日干しするための乾燥棚です。どの棚にも隙間なく粘土板が積まれており、ブルーシートを被ったトロッコに満載されたものは、乾燥が終わった粘土板の様です。
写真⑤
写真⑤は写真④の分岐から振り向いて写したものです。
写真⑥
写真⑥は写真④の本線方向の先を写したもので、ここにも分岐がありました。前方には民家があり、その前を人が歩いています。このヘロヘロ軌道はどこへ続くのか?まさに魔境の迷路です。