ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第63話 1985年大井川 本来のローカル輸送(その4)

大井川鉄道はなんだか観光鉄道が本業みたいですが、その生い立ちは大井川上流の電源開発や森林資源の輸送が目的でした。すでに木材輸送はなくなってしまいましたが、ダム建設やダムの保守には大井川鉄道が欠かせない存在です。特に、千頭から奥の井川線はダムや水力発電の保守のために存続している様なもので大井川鉄道が運行をしていますが、実質は中部電力のものです。よって、赤字だろうが、災害に遭おうが廃止するわけにはいきません。現在も土砂災害で運休となっている区間がありますが、復旧に向けて整備中です。しかしながら、井川線の沿線は南アルプス国立公園に属し、寸又峡温泉などの観光地もあり、大井川鉄道では古くから井川線の観光化に取り組んでいます。

今回は1985年当時に垣間見た井川線です。

 

1.DD203 (千頭:1985年9月)

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 当時井川線の主力機は導入したばかりの最新鋭DD200形で現在も主力機です。

このての車両は正直興味ありませんが、せっかくなので当時の状況です。DD200形は箱型20tのディーゼル機関車ですが井川線の特殊限界に合わせてコンパクトにまとまった小型車両です。井川線の前身である中部電力専用線ナローゲージ軽便鉄道並の規格で建設されたため、改軌後の車両も軽便鉄道並の車両寸法を余儀なくされ、この様な小型車両でなければ走れません。この車両が導入される以前の車両も同様に押しつぶされた様な格好の凸型機でした。もう少し訪問が早ければ以前の凸型機も見ることができましたが、タッチ差で叶いませんでした。

 

2.DD202 (千頭:1985年9月)

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DD200形(注1)は井川線の近代化で1982年~1984年に4両が新製されました。 バックグランドに電力会社があったのでこの様な新車の導入が叶ったものと思われますが、近い将来、長島ダムの建設で路線の付替えと、その区間アプト式鉄道を採用し、更なる観光化を見込んだ先行投資だったようです。

(注1)DD200形の車歴

・大井川DD201、201:1982年日本車輌

・大井川DD203、204:1983年日本車輌

 

 3.井川線の客車群Cスロフ300形他(千頭:1985年9月)

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当時の井川線寸又峡温泉や接阻峡への観光客輸送が主たる旅客輸送でした。本線のSL列車に乗って、千頭からトロッコモドキの井川線に乗り換える観光ルートが確立されていましたが、観光シーズンを外れると悲惨です。その波動性をカバーするため、様々な客車が在籍しました。

井川線の客車は専用線時代からの車両と、地方鉄道になってから貨車を改造して観光用に増備した車両に区分けされます。形態的に密閉型で車体中央1ドアの車両が観光用で、クロスシート車がCスロフ300形(注2)、ロングシート車がCスロフ500形(注3)です。

(注2)Cスロフ300形の車歴

・大井川Cスロフ301~304:1962年日本車輌製(Cトキ222,223,220,221改造)

・大井川Cスロフ305:1978年自社製(Cトキ216改造)

・大井川Cスロフ306:1979年自社製(Cトキ215改造)

・大井川Cスロフ307:1981年自社製(Cトキ214改造)

・大井川Cスロフ308:1983年自社製(Cトキ213改造)

(注3)Cスロフ500形の車歴

・大井川Cスロフ501~503:1972年自社製(Cトキ217,218,219改造)

 

 4.スハフ6 (千頭:1985年9月)

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 写真のスハフ6は専用線時代に工事関係者輸送用として製造された古風なオープンデッキ車両Cスハフ1形(注4)で、5両(スハフ3~7)製造されましたが、1985年時点で4両在籍していました。車内は当初板張りのロングシートでしたが、観光客用にも使用されるので、ロングシートのままモケット貼りに変更されました。

(注4)Cスハフ1形の車歴:大井川Cスハフ4~7←中部電力Cスハフ4~7:1953年帝国輌製

 

 5.スロフ1他 (千頭:1985年9月)

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 写真の手前の車両は、これも専用線時代に製造されたCスロフ1形(注5)で2両(スロフ1,2)在籍しました。

この車両は当初からモケット張りのロングシート車で、来客用だったそうです。よって、形式も国鉄2等車並みにスロフを称していましたが、この車両に1時間半以上も乗車するのはかなりキツイです。しかし、閑散期の井川線ではこの車両1両でもちょうど良いくらいの輸送量と思います。

(注5)Cスロフ1形の車歴:大井川Cスロフ1,2←中部電力Cスロフ1,2:1953年帝国輌製