ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第531話 1992年近鉄(養老):名古屋特急の養老院(その3)

お隣の名鉄揖斐線が、名鉄電車の老人ホームならば、こちらの近鉄養老線近鉄特急の養老院と言ったところでしょうか。

ところが、この元6421系、6431系以降の近鉄特急は一般車に改造されることなく廃車時点で解体となりました。やはり、これ以降の特急車は基本的に一般車には改造できないような車体構造だったからですが、最新の「ひのとり」も遡ればこんな電車の末裔です。しかしながら、ビスタカーの一般車化改造など、非現実的ではありますが、面白そうです。模型なら実現できそうです。

 

1.モ423、モ432他 (美濃高田:1992年5月)

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 元特急車の走行撮影はさておき、養老線の在籍車両を全く把握していなかったので、美濃高田で車両形式写真を撮りながら実態確認を行いました。美濃高田駅は上下線間が少し離れた相対式ホームなので車両形式写真の撮影には好都合です。

 

2.モ432+ク592+ク550 (美濃高田:1992年5月)

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 養老線の車両は、一見同じ様に見えますが、どの車両も微妙に違います。

この430系(注1)は、名古屋特急最後の増備車である元6431系です。最後の吊掛特急となりましたが、側窓に2連窓を採用し、少し角のとれた近代的なフォルムの車両で、名古屋線初の20m車です。製造時期的に後の名阪特急となる初代ビスタカー10000系と同期の車両ですが、こちらは如何にも一般車風で、名古屋線の改軌後の1965年に先輩の元6421系共々特急の座をエースカーに託して一般車化されました。その頃の近鉄電車は一般車も2連窓を採用し始めた頃で、3ドア化された6431系は見た目も一般車とたいして変わらず、ロングシート化されていたので、養老線ではこの車両が元特急車であったことを知って乗っていた人は少なかったのではないかと思います。

 

3.モ422+ク572 (美濃高田:1992年5月)

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 そして、430系の先輩である420系(注2)は、元6421系特急車でした。430系に比べて2段窓の側窓が古臭い感じがしますが、中央ドアがなければそれなりにまとまったデザインです。この車両は1953年製なので、東武5700系の増備車と同期の車両ですが、ノーシル・ノーヘッダーの張り上げ屋根で、東武5700系よりも10年くらい若そうに見えます。

 

4.モ424+ク574+ク557 (美濃高田:1992年5月)

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(注1)430系の車歴

近鉄モ431,432←近鉄モ6431,6432:1958年近畿車輌

近鉄ク591,592←近鉄ク6581,6582:1958年近畿車輌

(注2)420系の車歴

近鉄モ421~425←近鉄モ6421~6425:1953年近畿車輌

近鉄モ426←近鉄モ6426:1955年近畿車輌

近鉄ク571~575←近鉄ク6751~6575:1953年近畿車輌

近鉄サ531←近鉄サ6531←近鉄ク6561:1952年近畿車輌

 

5.ク591 (西大垣:1992年5月)

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※当時の養老線の列車編成

<2連+増結車の編成>

・モ421+ク571+(増結車)~モ425+ク575+(増結車)

・モ431+ク591+(増結車)、モ432+ク592+(増結車)

・モ441+ク541+(増結車)~モ445+ク545+(増結車)

 (増結車)ク540形:ク546,547,549,550、ク550形:556~ク560

<3連固定編成>

・モ426+サ531+ク548

 

6.ク556+ク545+モ445 (大垣:1992年5月)

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 ク556は、元々6441系の電動車だったモ6445~6450を増結用にTc化して方向転換した車両です。6441系は名古屋線の通勤輸送改善目的で、先に大阪線に導入された1460系を模した車両です。外観はちょっと前のお馴染みの近鉄電車スタイルとなりましたが、1460系はカルダン車なのに6641系は、元伊勢電モニ231形を前身とする、モニ2631形の機器を流用した吊掛車で登場しました。名古屋線の改軌後は広軌化されて名古屋線で活躍しましたが、名古屋線初の4ドアカルダン車である1600系が増備されると肩身が狭くなり、往年の特急車と共に、1979年~1984年に全車20両が養老院入りしました。

 

7.デ33 (西大垣:1992年5月)

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 西大垣の車庫には電気機関車がいました。デ31形(注3)と言うデッキ付きの箱型40t機で、元は同型車が3両いましたが、デ32は廃車後に名古屋本線塩浜工場の入換機となり、この時点ではデ31,33の2両が在籍していました。

養老線は、関西本線桑名と東海道本線大垣をバイパスする路線であったことから、かつてはこの路線を利用する貨物も結構あり、以前から個性的な電気機関車が在籍していましたが、貨物輸送の縮小により、当時は大垣~西大垣間のわずか1駅間の輸送しかありませんでした。

(注3)デ31形の車歴

近鉄デ31,33:1948年三菱重工