ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第541話 1992年京福(越前):とりあえず見に行く

1992年は3回も北陸へ行きました。その目的の大半が立山砂防だったわけですが、当時の北陸は今の様に新幹線で簡単に行けるところではなく、なにより電車賃もかかるので、貧乏性の私は「行ったついでに」必ず他にも寄り道をしました。

ところが毎回通過していたのが京福電鉄福井支社です。あまりにも無視し続けるのも失礼と思い、「とりあえず見に行く」ことにしました。

 

1.モハ2015、モハ2111 (福井口:1992年11月)

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京福福井支社を無視していた理由は、ここまで来て阪神や南海の使い古された電車を見てもしょうがないと思ったからです。実際、在籍車両のほとんどが阪神、南海の中古車でした。 京福福井支社を最初に訪問した1985年には、まだ元東急や元小田急の車両がいましたが、1992年当時はそれらもいなくなり、オリジナルの車両もモハ250形が3両だけになっていました。1985年訪問時様子は、第82話をご覧願います。

 

2.モハ2107+モハ2108 (福井口:1992年8月)

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 まずは、元阪神電車です。このグループは1985年の訪問時には、元阪神5101形の車体にモハ1001形の機器を流用したモハ1101形と元阪神5231形、5251形の車体にモハ2001形や京阪電鉄から譲受した機器を流用したモハ2101形が既に主力として在籍していました。今回の訪問時も相変わらずでしたが、モハ2101形は輸送力の見直しから片運の2連を解いて両運車化されたものや、貫通化されて少し状況が変わっていました。そして、新たに阪神から元3301形を譲受し、国鉄101系の台車や機器と組み合わせ、京福福井支社初の冷房車としてモハ2201形4両が増備されていました。

 

3.モハ2113+モハ2106 (田原町:1992年8月)

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写真のモハ2113はたしか両運車で、後方の片面が非貫通でしたが、この列車を見ると後方に片運車であるモハ2106が連結されており、何か変化があった感じです。

実は、1992年時点でモハ2101形(注1)は以下の改造を受けていました。
・元々両運だったモハ2113~モハ2116の非貫通側妻面を貫通化
・片運2連だったモハ2111+モハ2112が両運化
・モハ2113(上の写真)が冷房化
・モハ2101形全車ワンマン化

 

4.モハ2113 (福井口:1992年8月)

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 ちょうど福井口の車庫に、先ほど2連で走っていたモハ2113が入庫していました。 

こちらの妻面はちょっと変な顔つきですが、非貫通を貫通化したものです。連妻の貫通路の開口高さに合わせたためか、前後の顔が少し違います。そして、2101形ではなぜかこの車両だけが冷房化されていました。

 

5.モハ2106 (福井口:1992年8月)

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写真のモハ2016は先ほどまでモハ2113と2連で走っていましたが、モハ2113と離れると片運車なので営業できません。本来この車両はモハ2105とコンビを組んでいるはずですが、この日はモハ2105は検査なのか姿が見えません。しかし、連結運転できる両運車が増えたことで、この様な片運車の片割れも稼働率が上がったようです。

 

6.モハ2113 (福井口:1992年8月)

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さて、モハ2101形の車歴は見た目からいたって単純そうですがさにあらず、第82話でも若干触れましたが、とてもややこしく、全てが同じ中古車改造でありながら、モハ2101~2107は新車名義で、モハ2108~2116は改造名義です。しかも、モハ2108~2116は機器を流用した旧モハ2001形の名義を引き継いでいました。どうしてこうなってしまうのか?やはり認可上の手間を省くためでしょうが、新車名義も改造名義も、全く実態に合っていないわけで、どうでも良い話ですがスッキリしません。
モハ2001形と言えば、元南海1201形であり、これまた非常に厄介な車歴の主です。
(注1)モハ2101形の車歴
①新車名義
京福モハ2101,2102:1982年武庫川車輌製(実態:阪神5239,5240(機器:モハ2011,2012))
京福モハ2103,2104:1982年武庫川車輌製(実態:阪神5235,5236(機器:モハ2013,2014))
京福モハ2105,2106:1983年武庫川車輌製(実態:阪神5231,5232(機器:モハ2005,2106))
京福モハ2107:1983年武庫川車輌製(実態:阪神5233(機器:モハ2015))
②改造名義
京福モハ2108←京福モハ2006←南海モハ1216:1936年日本車輌製(実態:阪神5234(機器:モハ2006):1983年武庫川車輌製)
京福モハ2109←京福モハ2004←南海モハ1238←南海モハ1562←南海モハ1238←南海モハ1564←南海モハ1238←南海クハ1238←南海クハ1913:1941年汽車会社製(実態:阪神5237(機器:モハ2004):1984武庫川車輌製)
京福モハ2110←京福モハ2010←南海モハ1228←南海モハ1052:1937年汽車会社製(実態:阪神5238(機器:モハ2010):1984武庫川車輌製)
京福モハ2111←京福モハ2009←南海モハ1221:1937年汽車会社製(実態:阪神5251(機器:モハ2009):1984武庫川車輌製)
京福モハ2112←京福モハ2008←南海モハ1220:1937年汽車会社製(実態:阪神5252(機器:モハ2008):1984武庫川車輌製)
京福モハ2113←京福モハ2007←南海モハ1219:1937年汽車会社製(実態:阪神5253(機器:モハ2007):1985年武庫川車輌製)
京福モハ2114←京福モハ2001←南海モハ1225←南海クハ1904:1937年川崎車輌製(実態:阪神5254(機器:モハ2001):1985年武庫川車輌製)
京福モハ2115←京福モハ2003←南海モハ1223←南海クハ1906:1937年川崎車輌製(実態:阪神5249(機器:モハ2003):1985年武庫川車輌製)
京福モハ2116←京福モハ2002←南海モハ1226←南海クハ1903:1937年川崎車輌製(実態:阪神5250(機器:モハ2002):1985年武庫川車輌製)
なお、モハ2108~モハ2116は、モハ2001形の改造名義であるため、書類上の竣工は1972年です。それにしても、モハ2109の車歴は遡るととんでもない変遷を辿っています。 

上記の車歴の如く、モハ2101形は、成りは阪神ジェットカーですが、実態は戦前製の南海電車というわけがわからな存在でした。まあ、どうでもよい話ですが、万が一、ふつうの人にこの電車を説明する時は、「元大阪の方で走っていた電車」という程度が無難なようです。

 

7.モハ1102 (東古市:1992年11月)

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モハ1101形(注2)は、1981年に京福福井支社が最初に元阪神電車の車体とモハ1001形の機器を流用した新車名義の車両で、2両在籍しました。この車両は元々が両運車だったので、導入にあたり車体の改造は2ドア化だけで済みました。

(注2)モハ1101形の車歴

京福モハ1101,1102:1981年武庫川車輌製(実態:阪神5108,5109(機器:モハ1001,1002))