ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第831話 1994年阪堺:ナニワの新喜劇的ノリ(その2)

さて、私は車体広告を見に来たのではなく、昭和初期の貴重な路面電車を見に来たわけで、何はともあれ、我慢して車両ごとの記録撮影です。

 しかし、車両ごとによく見ると、塗色だけではなく、描かれているイラストや文字もかなり強烈です。

 

1.167 (我孫子道:1994年10月)

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 この電車は、この当時最古参のグループである阪堺オリジナルのモ161形(注1)です。この頃になると、こういった古い路面電車も全国的に減っており、広電に少々残っている程度でしたが、なぜか阪堺ではまだまだ大勢力でした。

(注1)モ161形の車歴

阪堺161~163,165~169←南海161~163,165~169:1928年川崎車輌

阪堺164Ⅱ←南海164Ⅱ←南海170:1928年川崎車輌

阪堺170Ⅱ←南海170Ⅱ←南海174:1931年大阪鉄工所製

阪堺171,172←南海171,172:1931年田中車輌製

阪堺173Ⅱ←南海173Ⅱ←南海175:1931年大阪鉄工所製

阪堺174Ⅱ,175Ⅱ←南海174Ⅱ,175Ⅱ←南海155,160:1927年川崎造船

 

2.174 (我孫子道:1994年10月)

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 モ161形は元々161~170が1928年製、171~176が1930年製でしたが、他形式車両を含めた形式再編により、最終的に(注1)の様に15両の所帯となりました。当初は直接制御車でしたが、連結運転のため間接非自動制御車に改造されて、連結器を装備しましたが、連結運転をやめた以降は連結器を外しています。1994年当時は全車健在で、全車が車体広告車となり、ご覧の様に凄まじい様相を呈していました。

「お酒電車」の174は、元々モ151形155を改番したもので、2代目でした。初代の174は形式再編で2代目170になっていました。

 

3.164 (我孫子道:1994年10月)

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「ファミマ電車」の164は、元々170を改番したもので、これも2代目でした。初代の164は形式再編でモ301形303となっていました。

 

4.125 (我孫子道:1994年10月)

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どこかで見たような黄色い電車が・・・。広電にもいた「電話帳電車」が阪堺にもいました。こちらは元大阪市電1601形を前身とするモ121形(注2)を真っ黄色に塗ってしまいました。恐るべしNTTの広告電車全国攻略です。

(注2)モ121形の車歴

阪堺121←大阪市1602←大阪市1612:1929年藤永田造船製

阪堺122←大阪市1607:1929年藤永田造船製

阪堺123←大阪市1608←大阪市1637:1929年藤永田造船製

阪堺124←大阪市1611←大阪市1661:1929年藤永田造船製

阪堺125←大阪市1612←大阪市1662:1929年藤永田造船製

阪堺126←大阪市1614←大阪市1664:1929年藤永田造船製

阪堺127←大阪市1615←大阪市1665:1929年藤永田造船製

阪堺129←大阪市1633←大阪市1683:1929年藤永田造船製

阪堺130←大阪市1639←大阪市1694:1929年藤永田造船製

モ121形は1967年に大阪市電1601形を10両譲受したものです。このうち128は1993年に火災廃車されましたが、それ以外の9両は健在でした。なお、モ121形は臓物を車体新製する601形に流用するため、1996年~1997年に121,130を残して廃車されまた。

 

5.305 (我孫子道:1994年10月)

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 旧型車はどの車両もみな同じに見えますが、この305は多段式間接制御車のモ301形(注3)です。モ161形同様に連結運転対応として誕生しましたが、制御装置の違いからモ161形との連結はできませんでした。また、モ301形も形式再編で誕生した形式なので、各車の生い立ちは様々です。

(注3)モ301形の車歴

阪堺301←南海301←南海173:1949年広瀬車輌製(1931年田中車輌製だが、戦災復旧時に新車名義となる。)

阪堺302←南海302←南海158:1949年広瀬車輌製(1927年川崎造船製だが、戦災復旧時に新車名義となる。)

阪堺303←南海303←南海164:1928年川崎車輌

阪堺304←南海304←南海176:1931年大阪鉄工所製

阪堺305←南海305←南海156:1927年川崎造船

阪堺306←南海306←南海153:1927年川崎造船

阪堺307←南海307←南海152:1927年川崎造船

 

6.302 (我孫子道:1994年10月)

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 この302の塗装は、一時期複数の車両にも展開されたオリエント急行モドキの塗装でした。この塗装は何を意味するのか意味不明でしたが、いつの間にか「すしのこ電車」になっていました。