ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第1148話 1993年井笠:山陽路保存車の落穂拾い(その3)

井笠鉄道が廃止されたのは1971年でした。当時私は小学校2年生で西宮に住んでいたので現物に乗ることも見ることもありませんでした。しかし、1979年に廃止後も放置されていた鬮場車庫と、そこに保管されていた車両を見に行く機会があり、辛うじて現物の軽便車両を見ることができました。その時の様子は、第519話第520話をご覧下さい。しかし、その直後に鬮場車庫が放火によってほぼ全焼してしまい、貴重な保管車両も焼失しました。これには大変ショックを受けましたが、その後、1981年に井笠鉄道創業70周年を記念して、井笠鉄道記念館なる井笠鉄道直営の資料館が開設され、焼失を免れた一部の車両が保存展示され、大変気になっていました。そして、1993年にようやく井笠鉄道記念館へ出向きました。

 

1.ホジ9(保存) (笠岡駅跨線橋下:1993年12月)

井笠鉄道記念館へは、JR笠岡駅前からかつての新山駅近くまで井笠鉄道バスに乗車しますが、まずは、笠岡駅近くの陸橋下に保存されたホジ9を14年ぶりに拝みに行きました。ホジ9の状態は決して宜しくありませんでしたが、それは、悪戯による破壊行為によるもので、陸橋下なので風雨に晒されることもなく、海沿いにもかかわらず車体はしっかりしていました。やはり、保存は放置であっても、風雨に晒されないことが重要です。

 

2.ホジ9(保存) (笠岡駅跨線橋下:1993年12月)

ホジ9は井笠鉄道生え抜きの車両で、梅鉢鉄工所製の貴重な軽便気動車の成れの果てです。そして何より、現在は「井笠鉄道ホジ9保存会」の手で整備されて、しっかり保存展示が継続されています。ボランティアの方々には、まったく頭が下がります。

 

3.井笠鉄道記念館全景 (井笠鉄道記念館:1993年12月)

そして、井笠鉄道記念館です。当時の路線バスは井笠鉄道の路線跡から少し離れた道路を走っていたので、バスの運転手さんに教えてもらったバス停で下車して少し歩きました。井笠鉄道記念館は、かつての線路跡である新山駅を利用した小さな私設博物館的存在でした。入館料は無料!!

 

4.社歴説明板 (井笠鉄道記念館:1993年12月)

この記念館には、路線廃止後に西武山口線に客車と共に貸し出されたSL1号機が返還されて保存展示されているほか、鬮場車庫の放火で焼け残ったホハ1とホワフ1も整備されて展示されました。

 

5.SL1号機 (井笠鉄道記念館:1993年12月)

保存車両は防犯のためフェンスで囲まれており、残念ながら標準レンズではまともに撮れませんでした。肝心のコッペルもこの有様です。

 

6.保存車説明板 (井笠鉄道記念館:1993年12月)

この記念館には、車両の他にも転車台やらガラクタが保存されていましたが、車両は屋根付きの展示スペースにあるので、とりあえずは安心です。

 

7.ホハ1 (井笠鉄道記念館:1993年12月)

屋根付きですが、木造車は傷みます。やはり維持管理は大変です。さて、この他の保存車両ですが、この近隣にホジ101やホハなどが現在も保存されています。しかし、当時は情報が不十分で確認ができませんでした。その他にも下津井電鉄に譲渡されたホジ3や西武山口線へ貸し出された客車なども結構あちこちで保存されています。

 

8.ホハ1+ホワフ1 (井笠鉄道記念館:1993年12月)

それは大変素晴らしいことですが、大問題はバス会社となった井笠鉄道が、過疎化の為か、今度は2012年に経営破綻で倒産してしまい、その後解散となり現存しません。幸い記念館は笠岡市が面倒を見ることになったそうですが、公共交通機関であるバス会社が倒産とは、世知辛い世の中になってしまいました。いまやJRも赤字路線の廃止を念頭に置いている様ですが、そのうちローカル線と言うものがなくなってしまうかも知れません。