ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第1099話 1996年近江:避けて通れない車歴の呪縛(その5)

今回は再び近江鉄道の電車の話題に戻ります。この頃は1系などのいわゆる近江形湘南電車の置き換えのため、西武鉄道から401系が大量に運び込まれていました。すでに車両の改造も着手されて彦根構内には改造が完了した車両や改造中の車両も見られました。

 

1.モハ1+クハ1213 (彦根:1996年11月)

そうなると、この1系はもう先が長くありません。これらの近江形湘南電車は皆同じスタイルをしており、趣味的にはつまらない車両ですが、例の名義上の車歴は滅茶苦茶で、理解に苦しむ存在でした。その詳細は複雑極まるもので、第468話に添付した近江鉄道歴代車両の車歴表をご覧頂きたいのですが、それを見て頂いても実態とは全く異なり、認可上の詐称履歴みたいなものなので、こういうデタラメがいつまでも継続されていることに疑問を超越して呆れるばかりです。しかし、近江鉄道さんにしてみれば、これは違法ではなく、全くの合法でした。これは、誰が悪いというものではなく、明治時代から続く認可制度自体の在り方に問題があることは明白で、やはり法律の見直しを行わないことが諸悪の根源です。

 

2.モハ3+クハ1220 (彦根:1996年11月)

さて、この近江形湘南電車ですが、このタイプの車両は以下の通り8両在籍しました。

① 131系

 ・モハ131+クハ1214  ・モハ132+クハ1215

② 1系

 ・モハ1+クハ1213 ・モハ2+クハ1222 ・モハ3+クハ1220

 ・モハ4+クハ1219 ・モハ5+クハ1221 ・モハ6+クハ1218

 

3.ワフ1形、クハ1214 (彦根:1996年11月)

この時点で、131系は2編成共彦根構内で放置状態でしたが、モハ131+クハ1214は1993年に廃車になっており、モハ132は1993年に車籍をモハ225に譲って幽霊車両となっていました。なぜかクハ1215だけは車歴を有していましたが、実態は廃車同然。

一方、1系は全編成健在でしたが、800系が本格稼働し始めた1998年から廃車が始まり、最後まで残ったモハ2+クハ1222が2001年に運用離脱して消滅しました。

 

4.モハ1+クハ1213 (彦根:1996年11月)

131系と1系は同じ形態の車体ですが、最初に登場したのは131系でした。形式の違いは131系は元西武電車モハ131,132の車体更新、モハ1系は近江鉄道電化時に導入した元宇治川電気の木造車の鋼体化に絡んでいたためです。クハは通し番号ですが、こちらは車歴がぐちゃぐちゃで、なかには明治時代のマッチ箱客車や、なんと蒸気動車の車歴を引きずっているものもありましたが、クハ1221,1222は新造車名義でした。

 

5.モハ3、モハ503 (彦根:1996年11月)

この当時、主力車だった500系も、これまたどうしようもない車歴の持ち主です。500系も1系に続き800系への置き換え対象となりました。

 

6.旧モハ103?、モハ801 (彦根:1996年11月)

ところで、800系ですが、第1編成は元西武401系を改造して、すでに1993年に竣工していました。ところが、1996年時点、その車両は彦根構内の走らない車両に囲まれて隠れていました。なんとなく隠してあったと言うのが正解なのか?せっかくのライオンズカラーで、冷房車でもあり、華々しくデビューしたはずが・・・なぜ?

お隣の2両存在するモハ103共々、近江のミステリーです。801編成の話しは、聞くところによれば、華々しくデビューしたものの、車両がデカ過ぎて限界支障が発覚して仕方なくお蔵入りしたそうです。なんだか野上電鉄の「自爆の設備投資」を思い出します。

そう言えば、その後の800系の増備はなく、彦根構内の元西武401系も放置状態が続いていましたし、路線改良なる名目で駅の改修をあちこちで実施されていました。そして、なぜか801編成に続く改造車はほぼ西武401系のままの820系となり、この年に竣工しました。これは近江八幡八日市間の線路改修完成に伴う導入車両だったわけですが、台枠の4角を切り欠いた一風変わったデザインでした。ところで、この一風変わったデザインは限界支障対策で車体を削ったものらしく、820系は応急的に登場した様にも思えますが、これで認可が下りたとは・・・・要は、ホームにぶつからなければ良いということなのか?。

 

7.ED314、元西武クモハ436他 (彦根:1996年11月)

その後、全線の改良が終わり、1999年からいよいよ800系の導入が本格的に始まります。彦根に留置されていた元西武401系も順次改造を受けて800系がどんどん増殖し、最終的に800系一族(820系、700系含む)は14編成28両の大所帯になり、まさに西武近江線のごときです。

 

8.元西武クモハ436+クモハ435他 (彦根:1996年11月)

元西武401は、なかなか改造が着手されず、色褪せてしまいましたが、この時点で14両が納入されていました。そして、この後も1996年12月に8両、1997年に6両が納入されます。この頃、私は大阪に住んでいたので、その後も時々様子を伺いに彦根に出向きました。