かつての山陽路にはマイナーなローカル私鉄がパラパラと存在しました。昭和の晩年や平成まで残った路線や軽便鉄道は結構メジャーですが、例えば、玉野市営、三蟠鉄道、鞆鉄道、尾道鉄道、防石鉄道、船木鉄道、長門鉄道などは、そんな鉄道があったことすら忘れ去られています。しかし、唯一保存車が現存する防石鉄道は辛うじてその存在が認知されている様に思います。
1.SL2号機+ハ6+ハニフ1(保存) (防府市:1994年8月)
現在、防石鉄道の保存車両は再整備されて防府駅の近くに保存展示されていますが、以前は防府駅から1kmほど住宅街を抜けた先の児童公園に、フェンスで厳重に囲まれて保存展示されていました。今回は、その再整備前の保存時代の様子です。
2.SL2号機(保存) (防府市:1994年8月)
この日は、小野田線のクモハ42を撮影して、その帰り道でした。以前からの気になっていた防石鉄道の保存車ですが、これだけを見るために防府へ行くのは抵抗があり、クモハ42とのセットで実現しました。
3.SL2号機(保存) (防府市:1994年8月)
防石鉄道は山陽本線防府駅から中国山地の山間部の堀駅までを結ぶ18.7kmの非電化私鉄で、周防と岩見を結ぶ計画で防石鉄道と名付けられましたが、計画は挫折して始終ローカル線で1964年に廃止されました。一応気動車も保有していましたが、気動車は廃止後に島原鉄道や東濃鉄道笠原線に譲渡され、古典SLと木造客車が保存されました。
4.SL2号機説明板 (防府市:1994年8月)
保存車は檻の中に厳重に保管されていましたが、状態は良好で、廃止から既に30年も経つのに、相当大切に保存されている様でした。しかし、公園内なのに意味不明な信号機や踏切の警報機が建ち写真が撮り辛い!
5.ハ6+ハニフ1(保存) (防府市:1994年8月)
保存車は明治の遺産である、これまた記念物級です。クラウス製のSLはともかく、この木造客車は、塗装こそ怪しいですが、感激モノです。ダブルルーフのオープン客車は別府のハフ7を思い出しますが、こちらは純然たる木造です。そして、荷物合造車はまるで模型の様な古典客車です。
6.ハ6(保存) (防府市:1994年8月)
<保存客車の車歴>
・防石2号機←川越2号機:1894年クラウス製
・防石ハ6←国鉄ハ68←中国ハ68:1909年平岡工場製
・防石ハニフ1:1918年枝光鉄工所製
7.ハニフ1の銘板 (防府市:1994年8月)
この翌年、これらの保存車両は再整備のためJR幡生工場で更新を受けて現在の防府駅近くへ移転となりました。この時に客車は木造車体を複製していますが、これはやむなし。
8.ハニフ1(保存) (防府市:1994年8月)
私は、その後の保存車の状況を知りませんが、路線廃止から60年となり、保存車は防府市指定の有形文化財になったそうですが、一時期かなり荒廃していた様です。ところが、ネットなどで確認すると、保存車は再々整備を受けて蘇り、新しい保存場所には屋根も設置されて良好な様です。