ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第536話 1990年黒部峡谷:乗らずに見るだけ

1990年春の北陸地方ローカル私鉄早回りでは、富山で雨に降られてしまい、予定外でしたが雨宿りのため地鉄電車に乗って辿り着いたのが宇奈月でした。この宇奈月からは、黒部峡谷鉄道が接続しています。黒部峡谷鉄道は、日本一乗車料金が高い鉄道で有名であり、最も近寄りがたい鉄道でした。しかし、乗らねばお金も掛かりません。

 そんなわけで、宇奈月で車両の写真だけ撮ることにしました。

 

1.EB5(保存車) (宇奈月:1990年5月)

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 ご存知の通り、黒部峡谷鉄道はもともと黒部川電源開発のため開通した工事軌道です。宇奈月欅平間は民営鉄道として運行されていますが、その先は現在も関西電力専用線として非公開です。なにやら近々非公開区間も観光路線化されるそうですが、その区間の建設秘話は惨劇そのものです。もし、興味のある方は、「高熱隧道(吉村昭著)」という小説をご覧ください。かなり生々しいです。

 

2.ED23 (宇奈月:1990年5月)

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 さて、黒部峡谷鉄道の車庫は宇奈月にあります。駅から入るとなれば入場券が必要ですが、日本一高い鉄道の入場券は、いったいいくらなのか?千円札を握りしめて切符売り場で尋ねたところ、入場券などないとのことで、拍子抜けしてしまいました。結局、改札の駅員さんに頼んで、ただで構内に入れてもらいました。

「乗らずに見るだけ」、だから撮り鉄は嫌われるわけです。

 

3.ED9+ED8 (宇奈月:1990年5月)

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 この日は雨でしたが、GWの最中だったので、ほとんどの車両は営業に出ており、車庫内はほぼ空っぽ状態でした。それでも、庫内には古風な凸型機が待機しており、それなりの収穫がありました。

 

4.ED9 (宇奈月:1990年5月)

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 このED9,8は、当時黒部峡谷鉄道の現役では一番古い部類の凸型電機でした。

この車両は、日本電力の専用線時代に黒部第3発電所建設用にED8~11(注1)の4両が1924年に導入されました。さすがにナローゲージなので車体は小さく、全長は6mで自重は15tです。これ以前の電機は更に小さく、宇奈月駅前に保存されているEB5(写真1)などの2軸のL型機でした。

 

5.ED11 (宇奈月:1990年5月)

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 (注1)ED形ED8~11の車歴

黒部峡谷ED8~11←関西電力ED8~11←日本電力ED8~11:1924年東洋電機製

※ED11は車体焼損の為、1957年にナニワ工機で丸味を帯びた車体を新製したため、角ばったED8~10とはスタイルがやや異なります。

 

6.ED11+ハ53+ハフ7 (宇奈月:1990年5月)

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 黒部峡谷鉄道は表向きは観光鉄道ですが、電源開発の専用鉄道の側面も担っており、結構頻繁に資材列車や工事関係者の専用列車が運行されていました。電気機関車は、観光列車用は箱型の20t機が重連で使用されており、小柄な凸型機は工事関係の専用機のようでした。