万葉線のLRV導入により、GTタイプの台車を履いたLRVが増えました。ここで弾みのついたIncentroモドキですが、更なる展開はJR富山港線のLRT化でした。国内初となるJR路線のLRT化でしたが、将来の富山地鉄市内線乗り入れによる市街地直結の可能性もあり、富山港線のまま腐らせておくよりは、はるかに期待できる路線でした。
そんな期待を背負って2006年に開業した富山ライトレール「ポートラム」ですが、この路線も狭軌であり、7編成のIncentroモドキが導入され、GT台車の実績と仲間を増やすことができました。
2.富山ライトレールTLR0602
このLRVはTLR0600形と称し、万葉線MLRV1000形とはほぼ同じ仕様のLRVですが、こちらは本格的なLRT路線となり、専用軌道区間では60㎞/h走行を行う本来の車両性能がようやく発揮されました。
3.富山地鉄デ9002
そして、「ポートラム」を追いかける様に開業したのが富山地鉄市内環状線でした。将来の「ポートラム」との相互直通を考慮して同仕様のデ9000形が2009年に3編成導入されました。こちらは「セントラム」と称しますが、塗装は異なるものの、外観形状と台車は「ポートラム」と一緒のIncentroモドキです。
4.富山地鉄デ9001
現在、「ポートラム」は富山地鉄に一元化されてTLR0600形は富山地鉄0600形となり、富山地鉄デ9000形、T100形と共通運用となっています。結果的に、デ9000形と0600形が同じさやに納まったわけですが、同型のLRVが導入されたわけがよく理解できました。
5.福井鉄道F1000形車両カタログ抜粋
北陸地方に繁殖したIncentroモドキですが、その集大成的アレンジバージョンが福井鉄道に出現したF1000形「FUKURAM」です。2013年~2016年に4編成導入された3車体のIncentroモドキです。
6.福井鉄道F1000形車両カタログ抜粋
この車両の特長は単に3車体化しただけではなく、車体幅の拡幅です。それまでの標準車体の万葉線MLRV1000形と比較すると下記の通りです。
(車体最大幅)MLRV1000形:2450㎜
F1000形:2650㎜
単純に200㎜車体が拡幅されていますが、これにより2人掛けのクロスシートがようやくゆったりとしたまともな寸法で構成されています。
7.福井鉄道F1001
さて、200㎜太くなったIncentroモドキですが、車体コンタや前面の曲面ガラスのサイズは変わっていません。何をどうしたのかと言うと、前面窓のピラーを太くしてデザインに取り込んでいます。標準車体の写真と見比べて頂くとよくわかりますが、標準車体では、前面ガラスの内側にピラーが構成されており、外側はガラスがつながっています。「FUKURAM」では、太くなったピラーを外に出して上手に処理されており違和感は全くありません。ちなみに前面のガラスでない部分はFRPのマスクです。こうやって、極力購入品の変更を抑えている努力が伺えます。