ローカル線の回顧録

1970年代後半から2000年頃までのローカル線の記録

第505話 番外編:NDC考察(その6)

1987年時点でNDC一般車のラインナップはほぼ確立したと言えます。これから後は、いよいよNDCの量産となり、18m級NDCを採用した秋田内陸縦貫鉄道と16m級NDCを採用した松浦鉄道に続きます。

 

1.秋田内陸縦貫鉄道AN-8800形

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秋田内陸縦貫鉄道は、1986年に元 国鉄阿仁合線と角館線を第三セクター化して開業した路線ですが、当初は国鉄からキハ22形を借用してスタートし、1988年に新製したNDC9両と置き替えました。

 

2.秋田内陸縦貫鉄道AN-8800形カタログの抜粋

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 秋田内陸鉄道は、雪深い山間部を通るため、このAN-8800形は、会津鉄道若桜鉄道のNDCをミックスした寒冷地仕様となり、形態的には若桜鉄道同系列の18m級となりました。

 

3.秋田内陸縦貫鉄道AN-8800形カタログの抜粋

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AN-8800形はまさに18m級NDCの決定版で、その後もこのタイプのNDCが増殖して行きます。形態的には平凡で面白味に欠けますが、このタイプの気動車が現在も新製されているとは、低廉化の矛先が設計を変更しないという消極的な考え方に陥ってしまった様です。

 

4.松浦鉄道MR-200形

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 一方、松浦鉄道は、1988年に元国鉄松浦線第三セクター化して開業した路線です。この路線には、錦川鉄道タイプの16m級NDCが開業時にイベント車も含めて18両も導入され、その後も同形車が6両増備されました。

 

5.松浦鉄道MR-100,200形カタログの抜粋

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特徴としては、MR-100形が貫通タイプで、MR-200形とイベント車のMR-300形が非貫通タイプであることです。

 

6.松浦鉄道MR-100,200形カタログの抜粋

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貫通タイプのMR-100形は、NDCの非貫通オリジナル形態を無理やり貫通化したような感じですが、この貫通バージョンがその後の主流となり、高千穂鉄道くま川鉄道など九州の第三セクター路線に増殖して行き、何とJR西日本の非電化路線にも、ご存知のキハ120形として登場します。

 

7.松浦鉄道MR-300形

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そして、松浦鉄道にはイベント車のMR-300形が2両導入されました。イベント車と言ってもMR-200形をオールクロスシートにして、カラオケ・ビデオセットを搭載しただけですが、93.8kmの長大路線に何かインパクトが欲しかったのでしょうか?しかし、MR-300形は1995年にはロングシート化され、廃車後はミャンマーへ旅立ちました。

 

8.高千穂鉄道TR-100,200形カタログの抜粋

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高千穂鉄道は、1989年にJR高千穂線を第三セクター化して開業した路線です。当初は松浦鉄道と同様の16m級貫通タイプのNDCを7両導入しましたが、路線は50.1kmあり、観光路線的な性格が強く、後にイベント車を積極的に導入して観光化に力を入れていました。しかし、2005年の台風14号により発生した甚大な水害に被災し、路線存続を断念することになり、非常に残念でしたが同年12月に全線廃止となりました。一部の車両は、JR九州阿佐海岸鉄道に引き取られましたが、これがNDCの転職の先駆けとなりました。

 

9.くま川鉄道KT-100,200形カタログの抜粋

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そして、高千穂鉄道に続き1989年にJR湯前線第三セクター化して開業したのが、くま川鉄道です。この路線も16m級貫通タイプのNDCを7両導入しました。これにより、16m級貫通タイプのNDCが九州地区の主流となりました。

その後、くま川鉄道は26年間もの長きにわたり、KT-100,200形を運用されて、現在は新潟トランシス製の第2世代の軽快気動車5両に置き替わりました。しかし、昨年発生した熊本県南部の集中豪雨で、まだ新車である気動車が全車浸水し、路線も甚大な被害を受け、現在運休を余儀なくされています。ローカル線存続の危機は経済環境ばかりではなく、昨今多発している未曾有の自然災害も避けることができない敵です。

くま川鉄道の存続を願っています。なんとか頑張って下さい。